新潟のつかいかた

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佐渡の山奥でも
わざわざ足を運びたい
〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉
と〈本と雑貨 ニカラ〉は
肩の力がスッと抜ける心地よいお店だった Posted | 2023/01/23

新潟県佐渡島には、オーシャンビューに、里山の風景、標高1000メートルを超える山、そして豊かな四季の移ろいもある——日本の縮図のような島ともいわれる佐渡島の山間部の集落、羽茂大崎でドーナツ店を営むのが、2015年に移住した米山耕(よねやまたがやす)さんです。

佐渡の観光スポットのひとつ、宿根木(しゅくねぎ)から車で約30分。観光で訪れるには少し遠いものの、わざわざ足を運ぶ人が多いお店が〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉です。2021年にはすぐ近くにパートナーの幸乃さんが〈本と雑貨 ニカラ〉をオープン。ふたりに共通するお店づくりが、多くのファンを生み出しているようです。

米山耕さんと幸乃さん
右から〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉の米山耕さんと〈本と雑貨 ニカラ〉の幸乃さん。

素朴さが評判のドーナツ店

〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉の外観
店舗は蕎麦屋〈ちょぼくり〉の一区画を借りて。

佐渡島の南側、小木港から羽茂(はもち)の町を抜けると、大崎集落の中心部にぽつんと佇むドーナツ店があります。素朴な味わいのドーナツが特徴の〈おいしいドーナツ タガヤス堂〉です。

メインのドーナツは、まんまるの見た目がかわいらしい〈プレーン〉(110円)と〈きび和糖〉(120円)。シンプルで飾り気のない2種類に魅了され、リピートする方が多いそうです。

袋に入った5個入りドーナツ
5個入りだと、〈プレーン〉は550円、〈きび和糖〉は600円。

提供しているドーナツは、この2種類以外にも、仕入れ状況や季節によって〈佐渡産無農薬グリーンレモングレイズ〉や、佐渡産のイチゴを使った〈おいCベリーのいちごミルク〉〈豆乳米粉カスタードサンド&きなこ〉など、さまざまな種類を用意しています。

「君もドーナツ屋やったらええんちゃう?」から大きく変わった

ドーナツを調理中の米山耕さん
ドーナツづくりから接客まですべて耕さんが担当している。

耕さんが佐渡島に移住したのは、2015年のこと。前年に知人の紹介で佐渡のブックフェス「HELLO!BOOKS」 に訪れたことがきっかけでした。主催の方の誘いで、気軽な気持ちで佐渡へ移住し、バイトをしながら生活していました。

そんな生活をしている最中、大阪からドーナツ店〈あたりきしゃりき堂〉が来るのでお手伝いへ。そこで、店主から「君もドーナツ屋やったらええんちゃう?」と誘われたことで、流れのままに開店準備。2016年9月にこの地でお店を出すこととなったのです。

店先に飾られた手ぬぐい
ドーナツや羽茂の名物をあしらった手ぬぐい(1300円)も販売している。

オープン後は少しずつ認知度が広まっていき、今では平日180個、土日や祝日には300個が売れるほどに。5のつく日にはゴマのドーナツを出したり、季節限定商品を出したり、コーヒーを出すようになったりと、少しずつレパートリーを広げていきました。

土地と関わりながら営む新刊書店〈本と雑貨 ニカラ〉

〈本と雑貨 ニカラ〉外観
油の倉庫だった頑丈な造りの店舗。ニカラはジョージアの画家ニコ・ピロスマニの愛称から。

そんなタガヤス堂のすぐ近くではパートナーの幸乃さんが〈本と雑貨 ニカラ〉を営んでいます。人文系を中心にエッセイや小説などの読みもの、実用書、絵本、佐渡の人がつくったZINEなど、さまざまなジャンルの本を置いている新刊書店です。

本を陳列する幸乃さん
現在の選書は幸乃さんだが、少しずつ耕さんの選書も増やしていく予定。

移住前は、香川県の小豆島で本屋を運営していた幸乃さん。結婚を機に佐渡島へ来て、最初は何をするか明確には決まっていなかったそうです。

しかし、耕さんが〈タガヤス堂〉の次の展開を模索して物件を探しているうちに、農協のチラシで現在の物件を発見。実際に見てみると、ふたりとも直感で気に入り、ここでお店を開くことを決意。どんなお店がいいかを考えて最終的にたどり着いたのが、幸乃さんの経験を活かした本屋でした。

お手製本棚に書籍が飾られている
店内の本棚は耕さんの手づくり。

お店がオープンすると、島内外からお客さんが来てくれるように。お客さんと会話をするなかで、次第に棚に変化が出てきました。

「店を開けているうちに『あの方は〇〇が好きと言っていたな』と、思い浮かぶお客さんの顔が増えて行き、並べる本の幅が広がっていきました。自然科学やレシピ本、以前から興味を持っていた老いや障がい、心のケアについて書かれた本は手に取る人が多いのでタイトル数を増やしました。

また、自分の好みもありノンフィクションが棚の大部分を占めていたのですが、お客さんの反応を見てフィクションを増やしているところです。これからも店を続けていくなかでどんどん棚が変化していくと思うので、自分でも楽しみです」

レシピ本『柿のお菓子づくり』
羽茂は柿の名産地でもあるので、柿のレシピ本を並べたことも。

旅行先で訪れる本屋は、その土地の文化や関心を教えてくれるもの。佐渡の人たちがどんな本に関心を持っているのか、どんな本を作っているのか。本との一期一会を楽しみにぜひ〈本と雑貨 ニカラ〉まで足を延ばしてみてください。

ニコ・ピロスマニの画集
店名の由来となったニコ・ピロスマニに関する本を手に取って。

佐渡の山奥にあるドーナツ屋さんと新刊書店。一見異なるジャンルに見えますが、その根底を流れる雰囲気は同じように感じました。

自分の好きなことを無理なく、ほどよく続ける。

自然体で生きるふたりの姿を見て、肩の力がスッと抜ける心地よい時間を過ごしたい人におすすめのお店です。

Information

【おいしいドーナツ タガヤス堂】
address:新潟県佐渡市羽茂大崎1566-3
tel:070-5266-2738
access:佐渡汽船両津港から車で約50分
営業時間:10:00〜17:00
定休日:火・水曜
web:おいしいドーナツ タガヤス堂

Information

【本と雑貨 ニカラ】
address:新潟県佐渡市羽茂大崎1507-1
営業時間:10:00〜16:00
定休日:火・水・日曜、祝日
web:本と雑貨 ニカラ