feature_niigatanokomejirushi_z02-ec
佐渡市歴/れきし2023.02.07

自分のアイデンティティを作ってくれた、
佐渡に根付く〈祭り文化〉

「#新潟のコメジルシ=新潟のいいところ」ってどんなところ? 
「だから新潟!」と、新潟を選びたくなるいろんな理由を新潟の人たちに聞いてみました。

上之山博文 さん

上之山博文 さん
佐渡市出身。大学進学を機に新潟市に移住し、市内に就職。約10年間を新潟市内で過ごすが、島外に出たことで佐渡への思いが強まり、その後Uターン。現在は〈公益財団法人鼓童文化財団〉の地域振興部長を務め、営業制作を担当している。また、佐渡で開催される野外フェスティバル〈アース・セレブレーション〉総合プロデューサー、地元・松ヶ崎の〈子どもの元気は地域の元気プロジェクト〉代表を務めるなど、幼い頃から佐渡の祭り文化に触れてきた経験も踏まえ、さまざまな佐渡の地域振興事業に携わっている。趣味はお酒を飲むこと。

https://www.kodo.or.jp/
https://www.earthcelebration.jp/
https://matsugasaki-ryugaku.com/

佐渡に古くから伝わる神事芸能〈鬼太鼓〉

佐渡に古くから伝わる神事芸能〈鬼太鼓〉 (撮影者:伊藤ヨシユキ)
(撮影者:伊藤ヨシユキ)

「だから新潟を選んでいる」という新潟の魅力は?と聞かれて、私が真っ先に思い浮かんだのは、佐渡に根付く祭り文化です。

私は佐渡市に生まれ、小さい頃から集落の祭りで行われる〈鬼太鼓〉に参加してきました。鬼太鼓とは、佐渡に古くから伝わる神事芸能のこと。〈鬼太鼓〉は地域や世代等によって、“おんでこ”もしくは“おにだいこ”と呼ばれています。
集落ごとに年1回行われ、無病息災や家内安全、五穀豊穣を祈って、太鼓の音とともに、鬼が踊ります(私たちの地域では鬼が踊ることを打つと言います)。鬼を打つのは、地元に住んでいる、または進学や就職で島外に出てはいるものの、この日のために帰ってきた若者たち。私たちの地域では、大人たちだけでなく、子どもたちも小鬼(ちぃせぇおに)として鬼太鼓に参加します。

私も小さい頃から鬼太鼓に参加し、大人たちとの関わり合いの中からさまざまなことを学んできました。祭り衣装の着方やわらじの結び方などの基本的なことから、踊り方、太鼓の叩き方、また、祭りの準備をする際に大人たちが楽しそうに会話している様子を見たり、自分もそこに混ざったりすることで、コミュニケーション方法も教わりました。自分は祭りに育てられてきた、自分のアイデンティティは祭りによって形成された、と強く感じています。

小さな集落を維持するため、なくてはならない祭り文化

小さな集落を維持するため、なくてはならない祭り文化 (撮影者:押川毅)
(撮影者:押川毅)

私たちの地域では、鬼は神社で〈打ち出し〉と呼ばれる初めの舞を打ったあと、〈門付け(かどづけ)〉といって、集落の家を一軒一軒まわり、家の敷地中でも鬼を打ちます。鬼たちは朝早くに神社を出発して、数十軒の家を訪れ、神社に戻ってくるのは夜。雨が降っても、嵐が来ても、よほどのことがない限りは決行されます。それほど、地域にとって欠かせない祭りなのです。

この祭りはただの行事ではなく、年に1回、集落の結束を固め、絆を深めるための大切な祭り。特に、地域に住む・ゆかりのある老若男女が、集落の家々をまわるというところが重要だと感じています。家ごとの住人の様子を確認し、コミュニケーションを取ることで、いざという時に助け合えるようにしておく。小さな集落を維持していくためには、なくてはならない文化だと思います。

各集落によって開催される日が違う祭りですが、4月は島内各地で春祭りが行われるベストシーズンです。門付け中の鬼太鼓を探すのは難しいかもしれませんが、太鼓の音を頼りに島内の様々な鬼太鼓と、佐渡ならではの祭りの熱気を肌で感じてもらう旅をお勧めします。ぜひ一度、佐渡にしかない貴重な祭り文化を、感じに来てみませんか?


編集部コメント

恥ずかしながら、佐渡では鬼太鼓という神事芸能が盛んだということを、この記事で初めて知った私。この祭りは、地域の大人と子どもや集落の家々が関わり合い、助け合うための大切な機会となっているのですね。鬼太鼓は地域ごとに特色が違い、集落の数だけ種類があるとも言われているようです。きっと地域の特徴に合わせた踊りが根付いているのでしょう。知れば知るほど奥が深そうですね。次に佐渡に訪れる際は、鬼太鼓に注目して旅行の日程を組んでみようと思います!(齋藤)