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新発田市歴/れきし2023.08.15

城下町の古い建物を活用したリレーショナルデザイン

「#新潟のコメジルシ=新潟のいいところ」ってどんなところ? 
「だから新潟!」と、新潟を選びたくなるいろんな理由を新潟の人たちに聞いてみました。

水島優 さん

水島優 さん
新発田市生まれ。18年間、パリで写真家として活動。作家活動と平行して、ジュエリーや有名人のポートレートなど商業フォトグラファーとしても活動。2021年に帰国し、新発田市の商店街にある築150年の商家を使い、仲間とisezi social design projectを立ち上げ、フランス式サードプレイスを元に、民間公共文化施設としてこれからの公共のあり方を実験的に活動中。趣味は、テニスと自転車で、フランスのヴィンテージ自転車を使ったイベントの企画にも携わる。

https://masaru.photography/
https://www.instagram.com/isezi.shibata/

フランスで得た学びを地方で活かす

新発田市にUターンで戻ってから1年半ほどになります。
それまでは18年ほどフランスのパリに住んで、仕事柄ヨーロッパのいろんなところに行ったりしていましたが、どこの地方も文化と歴史を大事にしているところが素晴らしいなと感心したものです。特にフランスの地方に行くと、その地方ならではの料理があったり独特の文化があったり、地方はおもしろいと思わされます。バカンスという言葉も聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。バカンスでは、都会の喧騒から離れて地方で何もせずにゆっくりするなんていうのが、楽しみになっていたりします。

日本に帰国する以前から、フランスのヴィンテージ自転車を使ったイベントや新潟での展示の際に、いろいろなところから来てくれた友人に新発田市街を案内すると、新発田城などの歴史的な建物だけでなく古いまま残っている看板や建物、昔からやってる喫茶店など、観光地ではないからこその人々の生活がそのままあるまちに魅力を感じてくれる人がたくさんいました。

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自転車のイベント
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新発田市の文化財〈すき焼 八木店舗〉の外観

新発田市では歴史的建造物や街並みを守る活動をしている〈新発田まち遺産の会〉や、市内の歴史的建造物を保存しつつまちの未来のために活用する〈しばたまち守の会〉という団体が活動しています。〈新発田まち遺産の会〉は年に1回のまちあるきやシンポジウムを企画したり、〈しばたまち守の会〉は空き家を改修するワークショップや、地域のイベントに合わせて野菜やクラフト作品などを売ったりイベントを行ったりしています。

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©しばたまち守の会

フランスでは、観光を使って経済効果を上げるのはもちろんですが、古いものを残したり活用することで、他の地方と差別化を図り多様な観光を生み出しています。外から来る人たちの目線があることで自らの価値を再認識する機会になり、それが住んでいる人の誇りにもなっていきます。

自分自身も築150年の商家をDIYをしていく中で、当たり前ですが大変さや不便を感じます。しかしそれ以上に、江戸時代からの痕跡があったりする古い建築物のおもしろさを感じています。来てくれる人が昔の商家の造りをおもしろいと言ってくれるのも嬉しいものです。一流のB級品みたいなものが氾濫している現代において、こういう不便だけれど趣があるものは愛情を持って残さない限り、なくなっていくのではないかと感じています。

地域に根ざした商家を持続させる
公共的な役割と地域をつなぐリレーショナルデザイン

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市役所で行われたISEZI主催のイベントの様子

〈ISEZI Social Design Project〉は、フランスのサードプレイスを参考にしながら、第3の居場所としての機能だけではなくて、新しい公共のあり方をつくろうとしています。市民が健全な意見表明の能力を持つための哲学教育の一環として哲学カフェの開催なども行いました。そういったソフト面から進めて、活動に必要な場所自体を自分たちでつくり出していきたいという想いで、自分たちで改修できる部分をSNSなどで呼びかけながらゆっくりとDIYをしつつ、つくっていっています。

※「リレーショナルデザイン」とは、埋もれた価値や情報、歴史、文化、人材などを洗い出し、今までとは違う表現方法でつなぎ合わせて再構築すること。実践的な学びの場と機会の提供、そして繋がりの支援、学びと繋がりを基調とした新たな仕組みや、関係性を構築すること。

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ISEZIで行うDIYの様子

今の新発田市ではいろんなものがなくなっていく最中の退廃美のようなものと、それを頑張って残そうとしている人々の愛情の両方を見ることができます。日本庭園や武家屋敷だけでなく、和菓子屋さんなどもすてきなお店がたくさんあります。そこら中に城下町としてかつて栄えていた名残りを見出すことができ、”本物”のお店が残っているのが魅力ではないでしょうか。

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民泊の様子

ISEZIでは、今年の1月から民泊を始めました。明治時代の建物でハッキリ言って不便ですし、わかりやすい観光地ではないのでたどり着く人もそんなに多くはありません。しかし来てくれるお客さんは古い建物や文化に興味があって来てくれる人が多いです。約半分は海外からのお客さんですが、そういうお客さんに新発田だけでなく、新潟や日本の地方の良さを味わってもらえたら嬉しいと思い、情報提供もさせてもらっています。

古いものをただ残すとどうしても費用や維持費がかかってしまうので、歴史の正統性の上に現代のクリエイティブを乗せて継続するための経済を回し、これからの時代に残る新しい関係性をつくることが、世代を超えて続いていく建物の活用方法ではないでしょうか。


編集部コメント

江戸時代には城下町として栄え、新発田城をはじめ、現在も歴史的遺産がまちの随所に残っている新発田市。水島さんがおっしゃるように、まだ多くの人には知られていない地域もあると思われますが、今回の記事を読んで、新発田市から新しい観光の形が生まれる可能性を感じることができました。古き良きものに現代のクリエイティブを掛け合わせ、愛情を持って残そうと活動を続ける水島さんの動きに、今後も注目です!(齋藤)