織物が紡ぐ小千谷の魅力
「#新潟のコメジルシ=新潟のいいところ」ってどんなところ?
「だから新潟!」と、新潟を選びたくなるいろんな理由を新潟の人たちに聞いてみました。
コロナ禍で気づいた小千谷の魅力
私は新潟県小千谷市出身で、現在は新潟大学で経済学を学んでいます。大学に入学した2020年は新型コロナウイルスの影響で大学に行くことができず、夏は暑い中マスクをしながら生活しなければいけない大変な時期でした。そんなときに、地元の知人が誕生日プレゼントにと私に贈ってくれたのが〈小千谷縮(おぢやちぢみ)のマスク〉でした。
〈小千谷縮〉は、千数百年の歴史を持つ越後麻布を江戸初期に改良されてできた小千谷の伝統的な麻織物です。〈経済産業大臣指定伝統的工芸品〉や〈国の重要無形文化財〉にも指定されています。
私が特に感動したのは、生地の軽さと涼しさ。まるでつけていないかのような驚くほどの軽さで、小千谷縮の特徴である「シボ」と呼ばれる凹凸が空気を逃がしてくれるので、常にひんやりとした清涼感が感じられ、その夏はとても快適に過ごせました。
小千谷市の小学生なら、だれもが小千谷縮について勉強します。子どもの頃は気づけなかったそのすばらしさに、故郷を離れて初めて気がつきました。それから私は、故郷・小千谷の伝統工芸に魅了されました。
小千谷の織物の魅力
小千谷市には、小千谷縮以外にも〈小千谷紬(おぢやつむぎ)〉や〈片貝木綿(かたかいもめん)〉といった織物があります。小千谷紬は、小千谷縮の技法を受け継いで生まれた絹織物で、絵柄を染めた緯糸(よこいと)と単色の経糸(たていと)で柄をつくりだしていく「緯総絣(よこそうがすり)」というのが特徴的です。片貝木綿は、雪国では難しい藍染の織物で、今ではカラフルでかわいらしい柄の着物があったり、袢纏(はんてん)を求めて全国からお客さんが来たりもするそうです。一つの街の中にこんなにもたくさんの種類の織物があるのは他の地域にはない小千谷の魅力だと思います。
織物から生まれた地域文化
「織物は地域の文化を守っている」。そう気づいたのは、今年2月末から3月上旬にかけて行われた〈絵紙と小千谷のひいな祭り〉という行事に参加したときでした。
「絵紙」とは、小千谷の方言で「浮世絵」のこと。かつて、江戸に商人が織物を売りに出た際、帰りに家族へのお土産として買ってきたのが浮世絵でした。それをいつしか、ひな祭りの時に雛飾りとともに壁一面に飾るという風習が生まれたそうです。
〈ひいな祭り〉といえば、全国でも行われていますし、新潟県内だと村上市が有名ですよね。でも、織物の街だからこそ見ることができる光景はとても華やかで見ごたえがあります。〈ひいな祭り〉は毎年2月末から3月上旬にかけて行われます。
また、「へぎそば」も有名です。織物の糊付けに使われていた海藻「ふのり」が入っていることで、香り豊かでつるっとしたのど越しがやみつきになります。これも、織物があったからこそ生まれた文化です。
このように、地域の魅力と魅力のつながりを考えながら観光をするのもまた面白いです。
織物を小千谷の魅力としてもっと身近に!
伝統工芸とか織物は、高価であったり日常遣いしにくいといった声もありますが、現在は洋服や舞台の衣装に使われていたり、小物やアクセサリーにアレンジされて日常遣いすることができたり、また街の行事や食べ物なんかからもその魅力を感じることができます。
私が以前、小千谷紬の職人さんからお話を伺った際、「今は人手不足だから高価になっているが、『良いものを作っているから高価なんだ』という風に社会を変えていきたい」とおっしゃっていて、私ももっと地域の伝統の現状に耳を傾け、力になりたいと思いました。
小千谷市はほかにも「錦鯉」や「牛の角突き」、雪景色など新潟や日本を代表する魅力がたくさん見られる場所です。ぜひみなさんも一度足を運んでみてください!
編集部コメント
私も何度か小千谷市を訪れたことがあります。今までの小千谷市のイメージは、「美味しいお米」「雪景色」「錦鯉」「へぎそば」でした。しかし、福島さんの記事を読んで、織物の街として、伝統と歴史を紡いできた街だと感じました。織物の文化があったからこそ、今では新潟を代表する「へぎそば」が誕生したエピソードは、とても感慨深いですね。〈小千谷縮〉や〈小千谷紬〉を使った小物やアクセサリーもとても素敵です!〈ひいな祭り〉が開催されている時期に、小千谷の織物の魅力を感じに、小千谷市に行ってみたいですね。(小日山)