冬 八海山
南魚沼市風/ふうど2026.03.11

厄介ものを魅力に変える。
南魚沼に根付く、雪と暮らす工夫と知恵

「#新潟のコメジルシ=新潟のいいところ」ってどんなところ? 
「だから新潟!」と、新潟を選びたくなるいろんな理由を新潟の人たちに聞いてみました。

名称未設定のデザイン

志太愛美 さん
*〈八海醸造グループ〉コミュニケーション戦略部所属。南魚沼市出身。
高校まで南魚沼で過ごし、東京の大学に進学。卒業後は新潟に戻り、教員を経て2024年に株式会社八海山に入社。現在は広報を担当している。趣味は料理とドライブ。

https://www.hakkaisan.co.jp/
*〈八海醸造株式会社〉は、新潟※(コメジルシ)プロジェクトの応援団です。

雪と遊んだ子ども時代

南魚沼の魅力は、何と言っても「雪のある暮らし」です。本格的な雪のシーズンは12月下旬頃から始まり、2月頃まで続きます。1月下旬の現在では160cmほど積もっています。

子どもの頃の記憶をたどると、雪と遊んだ思い出が自然と浮かんできます。たくさん雪が積もるので、少し穴を掘るだけで簡単にかまくらができ、その中に入ってみかんを食べたりして遊んでいました。小学生の頃には、朝の冷え込みで硬くなった雪の表面を歩く“しみわたり”をしながら、友達と通学したこともあります。

大人になってからは雪で遊ぶことは少なくなりましたが、雪国ならではの景色は今でも心を動かされます。冬の晴れ間が少ない分、雪が降り積もった後の晴れた空は特別に美しく感じます。真っ白な雪と青空、そして八海山の山並みのコントラストは、南魚沼ならではの景色だと思います。

雪下野菜に、発酵文化。雪が深く関わる南魚沼の食

南魚沼では、雪が食文化に深く関わっています。その代表例が雪下野菜です。秋に収穫した野菜を雪の中に埋めて保存し、冬の間に少しずつ食べるのは、この地域では一般的な習慣になっています。埋めるのは、白菜や大根、にんじんなど冬によく使う野菜が定番。多くの家庭では敷地の中の雪に埋め、目印を立てて必要なときに掘り出して使います。

雪の中で保存された野菜は、寒さから身を守るために糖度が上がり、甘みが増します。さらに、雪で湿度が保たれるため、冷蔵庫で保存したものと比べてしなしなにならず、水分を含んだままの状態で鮮度が長く保てます。個人的にお気に入りの白菜は、冬の鍋料理によく使っています。

雪室野菜

他にも、よその地域では緑色のまま食べることが多い神楽南蛮を、この地域では赤く熟してから収穫し、塩麹や塩を混ぜて発酵させて調味料として使います。作り方は家庭ごとに少しずつ違い、昔からそれぞれの家の方法が代々受け継がれてきました。塩分濃度が高いため長期保存ができ、冬場の料理に欠かせない存在です。

こうした保存や加工の工夫は、新鮮な農作物が手に入りにくい冬を乗り切るための、雪国ならではの知恵なのだと思います。

雪を活かす発想から生まれた雪室

雪室も、豪雪地帯ならではのものです。私が勤めている八海醸造は自社で雪室を保有し、日本酒などの熟成に活かしています。東日本大震災をきっかけに自然エネルギーの見直しが進む中で、「雪国の酒蔵として雪を活用できないか」という思いから生まれました。2月中旬から下旬にかけて1週間で約1千トンの雪を搬入し、1年経っても半分近くが残るため、翌年はその上に雪を足していきます。

雪中貯蔵庫

雪室では温度・湿度が年間を通して一定で、振動もほとんどありません。そのため非常にストレスの少ない環境で熟成が進み、驚くほどまろやかで綺麗な味の日本酒になります。雪室で3年熟成させた日本酒を販売しており、味はもちろん、雪を連想させるパッケージとストーリーで海外のお客様にも人気があります。日本酒だけでなく、野菜やコーヒー豆を雪室で熟成させた商品もあり、こちらも好評です。

厄介ものを魅力に変える、雪国ならではの工夫と知恵

雪とうまく付き合う工夫は、除雪のシーンでも見られます。南魚沼では雪下ろしや雪かきの大変さを減らす工夫として、消雪パイプが普及しています。道路に埋め込まれたパイプから井戸水を流し、雪を溶かす仕組みです。各家庭でも家の周りや屋根に設置されていて、雪下ろしが必要ない家もあります。昔からよく雪が降るため除雪の技術が非常に高く、道路はとてもきれいに整備されていて、日々助けられています。

除雪作業など、雪は大変で厄介な面もあります。しかし、日本酒造りに欠かせない雪解け水や、長い冬を生き抜くための発酵文化、雪が田畑をゆっくり休ませてくれるおかげで美味しい農作物ができるなど、雪によって生かされているとも感じます。

厄介ものとされがちな雪とうまく付き合う工夫や、魅力に変える知恵が南魚沼にはたくさんあります。雪のある日常そのものが、この土地らしさであり、私が感じる南魚沼の大きな魅力です。


編集部コメント

雪遊びの思い出から、雪下野菜や発酵文化、雪室や消雪パイプなど、雪国ならではの暮らしの様子が多面的に伝わってきました。厄介ものとされがちな雪が、地域の食文化や風景を魅力的にしている存在だという視点が印象的です。読み終えたあと、雪景色を少し違った目で見られそうな気がします。(卜部)