職人の背中から教わる、ものづくりの真髄
「#新潟のコメジルシ=新潟のいいところ」ってどんなところ?
「だから新潟!」と、新潟を選びたくなるいろんな理由を新潟の人たちに聞いてみました。
今回は、昨年度県民ライターとして記事制作に取り組んだ長谷川さんが、その経験を生かして、燕三条の魅力についてご紹介します。
愚直にものづくりに向き合う姿勢に奮い立たせられる
新潟県にはものづくりに携わる企業がたくさんあります。一言でものづくりといっても金属から木材、服飾関連、食品製造など業種はさまざま。日本、そして世界で評価される企業も数多くあります。
フリーランスのライターである私は、こうしたものづくり企業の取材を数多く経験してきました。ふと気になって調べてみると、今までに行った工場は100社近く。金物のまち・燕三条を中心に村上から糸魚川まで県内全域の企業に伺いました。
こうして取材を重ねるうちに、何十年経っても研鑽に励む職人の姿に惹かれるようになりました。包丁や厨房機器などのメーカーから、磨きや切削、溶接などの一工程だけを請け負う工場まで。どの工場も現状に満足せず、「どうしたらもっと良くできるのか」と常によりよい品質を目指しています。
ある取材で70代の職人に「何年くらい経ったら、一人前になれるのでしょうか?」と聞いてみたことがあります。すると、その職人は少し戸惑った表情でこう答えてくれました。「どうなんですかね、私もまだまだ一人前じゃないので」と。
ものづくりの世界に入って50年以上。ひとつのことに向き合い続けてきてもなお、まだ一人前とは言えないのがものづくりの世界なのです。一生修行。そんな言葉が脳裏をかすめました。
こうして職人を取材していると、自分の仕事を振り返る機会がたくさんあります。ジャンルは違いますが、記事をつくることも、ものづくりの一つ。目的に沿った記事となるように入念に下調べをし、インタビューでは話しやすく、かつ深く思考に潜れるように頭をフル回転。そして、適切な表現を探し、誰かを不用意に傷つけていないかを考え、納期まで何度も何度も読み返す。本当にこの表現が適切なのか。誰かを傷つけていないだろうか。もっといい言葉があるのではないか。キーボードを打っては消して打っては消してを繰り返す毎日です。
正直な話、めげそうになることはたくさんあります。でも、職人だって一人前でないなら、たった5年しか経験していない私はできる限りを毎回積み重ねていくしかありません。
“もっとよく”を追求して改善を繰り返す。
地道に積み重ねるしか道が続かないことを知っているから。そして今日もまた、職人の姿を思い浮かべながら、私はキーボードを叩きます。そう思わせてくれる、心強い仲間がこの新潟にはいるのだから。
編集部コメント
実は、一度提出してくださった原稿をもう一度書き直したいと申し出てくれた長谷川さん。この記事を最後まで読めば、その理由も納得。私も新潟県内各地とまではいきませんが、特にデザインや、ものづくりに向き合う新潟人の皆さんの背中にポジティブな影響を受けています。ともに切磋琢磨し合う新潟の職人たちの存在は、新潟の産業をはじめとするさまざまな分野に、欠かせない存在ですね。(金澤)