『日本のアンデルセン』小川未明の達人と、童話の世界をひとめぐり
~コメジルシくんが聞く!新潟の魅力 vol.6~
各地の『達人』に新潟のすてきなところを教えてもらう企画『コメジルシくんが聞く!新潟の魅力』。誰かに伝えたくなる新潟の魅力を探して、コメジルシくんが県内をめぐります。
今回訪れたのは上越市。上越といえば、日本三大夜桜のひとつ高田城址公園や、戦国武将・上杉謙信ゆかりのお寺、水族館『うみがたり』など見どころがたくさん。
そんな上越市は、実は『日本のアンデルセン』と呼ばれる童話作家が生まれ育った場所でもあるんです。高田城址公園の一角にたたずむ『小川未明文学館』の学芸員・上村 聡子さんが詳しいお話を聞かせてくれました!
『日本のアンデルセン』小川未明
「コメジルシくんは『赤い蝋燭(ろうそく)と人魚』という物語を知っているかな?この物語を書いた小川未明は、ここ、上越市出身なんだよ」
そう言って、文学館のエントランスを案内してくれた上村さん。
手にした赤い装丁の本・『赤い蝋燭と人魚』は小川未明の代表作で、北の海に棲む人魚と人間の関わりを描いた作品です。作中に何度も出てくる“冷たく暗い海”の描写は、冬の日本海を思わせます。
「未明は、明治15年に高田の街に生まれ、東京に進学するまでの18年間をこの街で過ごしたんだよ。そして大学に在学中から小説を発表し始めました。生涯でおよそ1200編の童話を創って、『日本のアンデルセン』、『日本近代童話の父』と呼ばれているの」
壁にずらっと飾られているのは、明治から昭和にかけて出版された小川未明の童話集の紹介パネル。色とりどりの表紙が並び、レトロな絵柄がキュートです。
『赤い蝋燭と人魚』以外には、どんなお話があるんでしょうか?そう聞いてみると、上村さんがほかの展示室も案内してくれました。
めがね、飴チョコ、etc…
文学館には童話の世界を体感できる仕掛けも
常設展示の『童話体験の広場』では、小川未明の作品にちなんだ遊びが体験できるようになっています。
こちらは、作品『月夜とめがね』をモチーフにした仕掛け。展示された大きなめがねのレンズを回してみると、作中でおばあさんがめがねをかけたときのように、女の子が違う姿に見えてきます…!作品に描かれた美しい情景を、登場人物の気持ちになって体験できそう!
こちらの巨大なキャラメルの箱も、作品にちなんだ展示。『飴チョコの天使』という、飴チョコ(今でいうキャラメル)の箱に印刷された天使が主人公のお話を元にしています。なんでも、田舎へ出荷されて、都会に帰りたがった天使の話なんだとか。そう言われれば、箱に浮かび上がる天使の姿がいきいきと見えてくるから不思議です。
「文学館では、様々な仕掛けで未明童話を紹介しているから、子どもたちもお話に興味を持つきっかけになると思うよ。家族で遊びにきてね」
子どもも大人も、思わず微笑んでしまうような遊び心ある展示がたくさんの文学館。予約すれば展示の解説が聞けるほか、第2・第4日曜日は午後2時から『文学館おはなし会』も開催されているそうなので、ぜひチェックしてみて。
未明ゆかりの場所
上村さんによれば、小川未明が幼少期を過ごしたという上越市には、文学館以外にも小川未明にゆかりのある場所が多くあるのだとか。例えば、上杉謙信を祀っていることで有名な春日山神社。こちらはなんと小川未明の父が創建したものなんだそうです。
未明もこんな景色を見て少年時代を過ごしたのかもしれませんね。また、海のほうには作品の世界を感じられる場所もあるそうです。
「『赤い蝋燭と人魚』は、上越市の海が物語のモデルと言われているの。市内には、物語に由来がある人魚の像がたくさんあるから、そのうちのひとつを見に行ってみましょうか」
連れてきてくれたのは、水族館『うみがたり』のすぐ近くにある船見公園。日本海を目の前にしたここに、人魚像のひとつが置かれています。
『赤い蝋燭と人魚』の一場面を切り取ったかのように、蝋燭を持ち、うつむきがちに海の方を向いた少女姿の人魚。どんな気持ちでここにたたずんでいるのでしょうか。
「こうやって、物語に想いをはせながら、ゆかりのある場所を訪れるのも、未明の世界の楽しみ方のひとつだと思うよ」
そう教えてくれた上村さんにならって、コメジルシくんも人魚像のそばに立ってみます。
人魚の隣で日本海を見つめたコメジルシくん、物語の世界にたっぷり浸ったようです。教えてもらったスポットをInstagram(@komepro_niigata)で投稿していました。
「コメジルシくんが聞く!新潟の魅力」では、これからもコメジルシくんが「達人」に魅力を聞いていきます。来月もお楽しみに!
『コメジルシくんが聞く!新潟の魅力』は、新潟県広報番組『週刊 県政ナビ』のテレビ放送およびその動画配信でもご覧いただけます。
【週刊 県政ナビ】2021年1月31日放送