600年以上前から受け継がれてきた
〈村上木彫堆朱〉
〜県北地域の情報を提供する
『moca』が感じる、新潟の「当たり前」〜
新潟県民にとっては「当たり前」でも、全国的に見ると当たり前じゃない!? そんな新潟の魅力を「当たり前品質100」として、新潟県に縁のある方に聞いてみました。
使い込むほどに艶が増す〈村上木彫堆朱〉
村上における堆朱の歴史は古く、漆技は1400年頃に京都から来た漆工が始めたと伝えられています。村上城主は全国でも珍しい「漆奉行」を置いて漆の増産をはかり、江戸時代中期には日本一の産出量を記録しました。村上木彫堆朱は、武家のたしなみとして武士の間で始められ、藩主の奨励もあり、町民にまで広く伝わり現在に至っています。
村上木彫堆朱は木地に繊細な彫刻を施したあと、そこに漆を何回も塗り重ねて仕上げる独特の技法の漆器です。木地に先に彫刻することで、躍動感のある彫りや細かい地紋が表現できるのです。繊細な彫りに漆が流れこんで埋まらないように、堅めの漆を用いることと、上塗り後に艶消しという工程を行うことが村上木彫堆朱の特徴です。そのため、使うほどに色艶が増し、透明感が出て味わい深くなります。昭和51年には国の「伝統的工芸品」の指定を受け、新潟県を代表する工芸品となっています。
村上木彫堆朱の種類は、伝統的な技法の堆朱、黒漆を用いて朱が透き通る黒色に仕上げる堆黒(ついこく)、木地に朱・黄・緑の三色を塗り重ね、最後に黒を塗り上げてから彫り下げて色を出す三彩彫り(さんさいぼり)などがあります。
村上の家庭には一家に必ずひとつはある村上木彫堆朱。小学校の体験学習で、コースターや箸などの木地に彫りや漆塗りの体験をし、自分だけの作品をつくります。
村上市内には、漆器店が点在しており、各お店で購入することができます。また、村上木彫堆朱会館には、十人ほどの職人さんが手掛けた作品が展示販売されています。
人気があるのは、手軽でお値段も手頃な箸やぐい呑み。また、女性職人によるペンダントや帯留め、ブローチやイヤリング、名刺入れなど、普段使いできる小物も増えてきました。飾っておく伝統工芸品ではなく、身近に使える伝統工芸品として、たくさんの人に手に取ってもらいたい。職人さんの腕とアイデアが溢れる作品に触れてみてください。
【編集部からひと言】
普段使いできる伝統工芸品へ
村上市内の家庭には、必ずある村上木彫堆朱。それだけ当たり前の風景に溶け込んでいる伝統工芸品なのですね。最近は、手軽に普段使いできる作品も多くなったとのことなので、手にとって見てはいかがでしょうか?
村上木彫堆朱の販売先(村上堆朱事業協同組合)、工程、種類など、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。