白鳥が訪れる「潟」で、
築かれた文化
新潟県民にとっては「当たり前」でも全国的に見ると全然当たり前じゃないことってたくさんあるはず! そんな新潟の魅力を、新潟県に縁のある方に聞いてみました。
新潟の暮らしを支えてきた「潟」
古くから「潟」と呼ばれる多数の湖沼が点在していた越後平野。
潟の近くに住む人たちは、潟の豊かな環境やそこから得られる恵みを活用し、漁業や農業、狩猟などの生業を成り立たせていました。次第に人々の生活様式や産業構造が変化し、潟は生業の場ではなくなってしまいました。しかし、現在でも新潟県内には多くの潟が残っており、多くの動植物が生息・生育し、憩いや活動の場としての機能を果たしています。
1986(昭和61)年に開業した鳥屋野潟公園には、池や水路、日本庭園、ユキツバキ園、 メイン広場などがあり、四季を楽しむことができます。また、2015年より鳥屋野潟公園内で「潟マルシェ」が開催されるようになり、人・社会・環境を大切にする“新潟ローカルライフスタイル”に出会う場としても知られるようになりました。
ネイチャートリップ&グリーンカヤックというイベントでは、自然を楽しみながら鳥屋野潟のゴミを集める体験をすることができ、自然環境について考える場にもなっています。
わたしはこの公園が好きで、数年前まで鳥屋野潟公園の徒歩圏内に住んでいました。現在は少し離れた場所に住んでいますが、季節が変わるごとに訪れる、お気に入りの場所です。
2020年10月のとある日にひとりで昼食をとっていると、美しい青空の中を飛ぶ白鳥が飛び立っていきました。飛び立つ白鳥、紅葉し始めた木々、ベンチにとまっていたテントウムシなど、自然と自分が共存している感じがして、ついシャッターを切ってしまいました。
忙しい暮らしの中では、ともすると先人が築いてきた文化や歴史から切り離されているように感じてしまうことがあります。そんな時こそ潟を訪れ、潟周辺の生き物の営みを感じとり、潟とともに築かれてきた暮らしに思いを馳せる、ゆったりとした時間を過ごしたいと思います。
【編集部からひと言】
「潟」の役割は形を変えて、
現在に受け継がれる
新潟の文字のなかに「潟」があるように、新潟は古くから「潟」とともに生きてきたまちでした。漁業や農業、狩猟などさまざまな生業の場として機能し、暮らしを支えてきた潟。現在は、生業の場としての役割ではなくなったものの、多くの生き物のすみかであり、人々の憩いの場となっています。新潟の歴史を語る上で欠かせない潟が、形を変えて、現在にも受け継がれていることが感じられるレポートでした。