日本初!
ワインぶどうの栽培&
雪室ワイン醸造など、
物語が見える「岩の原葡萄園」
新潟県民にとっては「当たり前」でも全国的に見ると全然当たり前じゃないことってたくさんあるはず! そんな新潟の魅力を、新潟県に縁のある方に聞いてみました。
岩の原葡萄園で、
日本ワインぶどうの父・
川上善兵衛氏の
軌跡を辿る
ワインで使われる「マスカット・ベーリーA」というブドウの品種を聞いたことはありませんか?
この「マスカット・ベーリーA」などのワインの代表的品種の栽培、雪室での醸造に日本で初めて成功した人物が、上越市にいたのです。その方が岩の原葡萄園を立ち上げた、川上善兵衛氏。
豪雪地でうまくコメ作りで悩む農民のために岩の原葡萄園を設立。当初は自宅の庭に鍬を入れ、葡萄園をつくったそう。10年以上の歳月をかけてブドウ品種の交配を研究し、現代の日本ワインの代表的品種を栽培するようになったのです。
しかも、川上善兵衛氏の師は勝海舟で、発酵の父である坂口謹一郎氏が川上善兵衛氏とサントリーの創業者である鳥井信治郎氏を引き合わせたというエピソードも。1941年には日本農学の最大栄誉「日本農学賞」を受賞しています。
そんなドラマにできそうなエピソードがたくさんある岩の原葡萄園が身近にあることが、わたしにとっての新潟の魅力です。
わたしが行ったのは、岩の原葡萄園第二号石蔵。明治27年建造の第一号石蔵とともに、現存するワイン蔵として日本最古の蔵です。ワイン石蔵は常時見学可能で、9月〜10月のブドウ収穫期には、ワインの仕込みを見学できることも。ワインショップでは限定ワインを含め、常時4〜5種類のワインを試飲できます。
日本のワインぶどうの父といわれる岩の原葡萄園創業者・川上善兵衛氏について学ぼうと思い、11月ごろにひとりで岩の原葡萄園へ。岩の原葡萄園に関する紹介アナウンスを聞いたり、雪室貯蔵について看板を見て勉強しました。
川上善兵衛氏は1890(明治23)年に岩の原葡萄園を開設。当地の気候風土に適したぶどうを求め、1万311回の品種交雑を行い、そのなかから「マスカット・ベーリーA」をはじめとする優良22品種を発表しました。これらのぶどうは現在日本各地で栽培され、今も世の多くのワイン愛好家に好まれています。
また、川上氏は冷却設備のない時代に雪を保存し、雪による冷却を実現させた人物でもあります。外国に負けない良質なワインを造るには、ぶどうを発酵させる時の温度を高くなりすぎないようにする必要がありました。そこで、川上氏は当時としては極めて珍しい低温発酵法を取り入れられないかと思案。
冬場の雪の深さは日本一といわれる高田の雪を雪室で保管し、春・夏はその冷気で石蔵内を冷やし、ワインを醸造する秋は発酵桶を雪柱で囲むことにしました。
こうして造られたワインは、日本初の本格的ワインとして全国の農産関係者の注目を浴びることに。各地の博覧会に出品されると、各種の賞を受賞し、皇室に献上されるまでになりました。
このように岩の原葡萄園にはドラマにだってできそうなエピソードがたくさんあります。今回お邪魔してみて初めて知ったエピソードもたくさんありますが、知らないことを知れた時は非常にうれしい瞬間です。同じ場所でも四季によっては映り方や感じ方が異なるので、何度でも楽しめたりするもの。こんな身近な場所にドラマがあるのが、新潟県です。ぜひ一つひとつの企業や場所、建造物の歴史を紐解いて、その背景もあわせて楽しんでみてくださいね。
【編集部からひと言】
身近な企業でもきっとある
「物語になるエピソード」
岩の原葡萄園を創業した川上善兵衛氏。新潟県内に日本初のワインぶどう栽培&雪室ワイン醸造に成功した人物がいるなんて、知りませんでした。小さい頃から当たり前にある企業でも意外と過去の話は知らないものですね。こうやって歴史を遡ると、身近な企業でも物語になるエピソードを持つ企業が見つかるのかもしれませんね。