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風/ふうど2021.03.10

毎年3m降る豪雪地・津南。
雪とともに生きるからこそ
生まれるたくましさ

新潟県民にとっては「当たり前」でも全国的に見ると全然当たり前じゃないことってたくさんあるはず! そんな新潟の魅力を、新潟県に縁のある方に聞いてみました。

照井あさ美さん

にいがた当たり前品質100・選者
照井あさ美さん

【プロフィール】
千葉県出身、2019年に津南町に移住。豪雪地帯で毎日を楽しく生活しながら地域活動や、町内外に津南町の魅力を伝えたいと、地域おこし協力隊として活動中。津南町の自然や農業、星空などを題材にした観光にも力を入れている。新潟の好きなところは自然と共生しているところ。
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豪雪が当たり前の暮らしの中で
感じる魅力

縄文時代から人が住んでいたといわれる津南町は、山や木々のおかげで雪はきれいな湧水となり、人々を潤してきました。豪雪地域でありながら、豊かな食料と穏やかな生活がある土地でもあります。

豪雪が当たり前の暮らし

私が津南町に魅かれた理由は、夏暑く、冬寒い、四季の移ろいを五感で感じられる自然が生活圏のすぐ近くにあり、その自然と共生しているところです。

私が最初に津南町に訪れたきっかけは、スノーボード。最初は正直、一面雪景色で何もない田舎町だと思っていました。

その後、スノーボードで何年か通っていく間に、東京の企業に就職したり、結婚をして横浜市に引っ越すなど生活の中心が段々と都心部になっていったんです。住まいは駅に近い場所で周りにはビルばかり。夜中まで電気が煌々と光り、千葉県に住んでいたころは帰り道に見上げていた星空も、横浜では一つも見えず、「いつか星空も空気も水もきれいなところに移住したい」と思うようになりました。

そんな時に訪れたのが夏の津南町です。その年はとても暑い夏でした。でも、津南町の風はとても涼しく、真夏とは思えないさわやかさがありました。さらに生活しているすぐそばに大自然があり、私が欲していたもののすべてがここにあるように感じました。

津南町に住む人たちは当たり前に自然と共生する強さを持っています。それがどれだけ凄い事なのかあまり町民の方は感じていません。でも、外から来た私にとって、そんな人たちの強さやたくましさと、この大自然が魅力的に映り、移住を決めました。

豪雪が当たり前の暮らし

豪雪が当たり前の暮らしは、大変と思われがちだけど、その雪の恵み、助けがあってこの土地には人が住み続けています。

毎年雪が3m降って当たり前、ちょっと家から出られなくたって動じない。それが津南町の強さです。どんどん降り積もる雪に、千葉県から引っ越してきた私は、「屋根に積もった雪で家が潰れてしまうんじゃないか」と心配になっていました。でも、隣のおじさんは「3m降ったってすぐには潰れやしないよ!まぁ家はゆがんで戸が開きにくくなるけどな」と笑って話してくれました。

豪雪が当たり前の暮らし

首都圏では、家が歪んでいるなんてありえないと思うのですが、雪国にある木造の家は、しなっても簡単には潰れない。自然に対して無理に立ち向かわず、ありのままを受け入れて暮らすことが今こそ必要なんじゃないかと思えました。

私は以前、東日本大震災と2019年の台風を千葉と東京で経験しました。カップ麺やレトルト食品が家にいくつかあっても、1日分の食事にしかなりません。その時は、スーパーの商品棚は空っぽになり、食べるものがない状態になっていました。

さらに当時の家はオール電化で、万が一停電になったら、ほとんど何もできなくなります。東京では隣近所の人と朝の挨拶はしても、どんな人かなんて知らないので頼ることもできません。

しかし、津南町は豪雪地という事もあり、備蓄する習慣が染みついています。家には備蓄食品があるから買い物に1週間行けなくとも死ぬことはありません。さらに、多くの人はお米、漬物、豆類、干し物などが家にあり、停電になっても庭で火を起こせば何とかなってしまうので、慌ててスーパーのものを買い占めるなんてしません。

また、雪の恩恵で冬の野外は自然の冷蔵庫になり、断水しても火を起こせればその辺の雪が水になります。豪雪の中でも、いたって普通の生活が送れています。

川の展望台朝焼け

県外からきた私にとっては、雪掘りも新鮮でした。まず、津南町で雪かきという言葉はあまり使いません。「雪をかまう」、もしくは「雪掘り」といいます。

雪が多いので、家の周りには水を流してたり、近くに雪を捨てるのが普通で、それを「雪をかまう」と言っています。

十日町の商店街や津南町の中心部には、雪を捨てる場所や時間が決まっているところがあるようですが、私が住んでいる集落まで来るとそんなことをしてたら除雪が追い付きません。もちろん、除雪車が多いとかそれなりの対策がされていますが、大体集落の中に川か雪捨て場(夏は田んぼ)がいくつかあるのでそこを活用しています。

また、津南町には垣根がありません。これは除雪の時に邪魔になるというが本来の理由ですが、壁がない事で「みんなの土地」という意識が強く、気ごころが知れてくると「雪はウチの庭に投げとけばいい」なんて声をかけてくれる優しいお隣さんもいたりします。

雪が降った後の集落では、皆さん大体外に出てくる時間や雪掘りの時間が一緒です。その時に「すごい降ったね」「屋根から落ちんな」など、声かけあうあたたかいやり取りが楽しみでもあります。

【編集部からひと言】
豪雪地帯だからこその
生活の知恵

豪雪地帯と聞くと、大変な暮らしを想像してしまいますが、そこに住む人々の知恵や繋がりは、他の土地にはない文化的魅力にもなっているんですね。新潟の中でも雪の多い津南町の、雪とともに生きるための知恵やたくましさ、つながりが少し羨ましくなりました。