子どもが素足で走り回り、
傷をつけても構わない。
阿賀野市・カフェオーナーの家
目次
田畑の真ん中にあるログハウス
農地の間に佇む日本の昔ながらの家塀。その奥に見えるのはアウトドアテイストのログハウス。阿賀野市でこのユニークな景観をつくり出しているのは、中澤さん一家です。
阿賀野市でカフェを経営し、家族4人で暮らす中澤瑞大さん。実は、同じ敷地内に生家があります。二十歳までここで生まれ育ち、一度新潟市で暮らしたあと2020年にUターン。2022年には実家の敷地内に戸建てを建てました。立派な日本家屋の横並びにログハウスが建つことになりました。
「最初から家を建てるという目的で帰ってきました」と語る中澤さん。大きなきっかけは子育てだといいます。
「新潟市ではモダンな2LDKのアパートに住んでいました。まったく木の雰囲気ではなく(笑)。私自身がここで育ったということもあって、まちなかより田舎で子育てしたいと思っていました」
そこでまず気になったのは住環境。都心部にも公園はありますが……。
「ここなら我慢しなくてもいいですよね。もちろん都心部の公園などでも走ったりできますが、その周辺にはどうしても住宅やいろいろな施設があって、どこかで子供を抑えないといけない、ということがあると思うんです。ここでは車の交通量も少ないですし」
何も気にせず遊ばせたいという気持ち。特に騒音は、子育てにおいて気になるトップ課題です。
「それなりに広い家を建てたとしても、それでも家のなかで走り回ったり騒いだりすると、周辺への騒音を気にしてしまいます」
ということで、周辺を気にしないでいい環境を選びました。今は家族3人で家の中を走り回っているようです。冬が終われば、遊びのフィールドは外へと広がっていきます。近くに桜並木の「散歩コース」があるので、寒くなる前は毎日歩いていたとか。桜が開花すると窓からも見えるといいます。ほかには外で土遊びをしたり、自然環境も満喫しているようです。
新潟市から車で30分程度。都会にも近いとはいえ、田舎特有の「濃い」コミュニケーションも残っています。それを敬遠する人もいますが、中澤さんは、ここで育ったからこそ、その魅力を実感しています。
「100人ちょっとの地域ですが、その全員が、この子が誰の家の子かわかっている。家族構成を知っている。そういう意味では安心です。だれか子供が泣いていると『あそこの子が泣いているな』ってすぐにわかる。こうした『濃いことの利点』は、自分が子どもを持ってみてわかったこと。自分が中学生くらいの頃はちょっとイヤでしたね(笑)。お節介といえばそれまでですが、田舎ならではのセキュリティでもあります」
中澤さんが、この地域で育ち、その文化を知っていることは大きいと言います。「もしまったく知らない土地に移住してきて、この濃いコミュニケーションを浴びたとしたら、つらいかもしれませんね」と笑います。
ただし子育てにおいては「何かあってからでは遅い」といいます。それを回避できる地域での子育てをポジティブにとらえています。かつては「地域で子育て」していました。それをそのまま現代に当てはめることはできませんが、良い部分は残していきたいもの。
「地域を歩いているだけで全員から話しかけられるので、人見知りしなくなりました」
特別なあしらいをしなくても、普段の暮らしのなかにコミュニケーションがあります。外で遊んでいるだけでコミュニケーションが生まれます。
「もし新潟市で公園に連れて行ったとしても、多分、周りの人に話しかけさせなかったと思うんです。そうしたら、人見知りになった可能性もあったでしょうね」