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コラム2021.02.21

“越後三条打刃物” 鍛冶と研ぎの達人・飯塚解房さんが語る「ものづくり」
~コメジルシくんが聞く!新潟の魅力 vol.7~

各地の『達人』に新潟のすてきなところを教えてもらう企画『コメジルシくんが聞く!新潟の魅力』。誰かに伝えたくなる新潟の魅力を探して、コメジルシくんが県内をめぐります。

今回訪れたのは、ものづくりのまち・三条市。日本を代表する鍛冶職人である『重房刃物』の飯塚解房さんに出会い、包丁づくりに込める思いを教えていただきました。

飯塚 解房(いいづか ときふさ)
地元企業を経て独立し、『重房刃物』を設立。協同組合三条工業会・三条市から産業振興に貢献したとして表彰を受ける。平成19年に新潟県知事より「にいがたの名工」に認定される。平成24年、伝統工芸士に認定される。三条鍛冶集団師範。

ものづくりのまち・三条市の『打刃物(うちはもの)』

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中世から金属加工が盛んで、鍛冶技術が発達してきたという三条市。中でも古くから主要産業となっていたのが、『越後三条打刃物』と呼ばれる、包丁や農業用刃物などの刃物づくりなのだそうです。
『打刃物』とは、鋼や軟鉄を炉で高温に熱して、ハンマーなどで打って成形した刃物のこと。日本刀の製造技術の流れを汲んでいて、伝統的な鍛冶と研ぎの技術が用いられています。
実際にどんなものなのか、まずは市内で製品を使っている方に聞いてみました。

料理人に愛される、切れ味と使い心地

打刃物の包丁を愛用する料理人のひとり、『割烹・懐石まるみ』のご主人・高橋一衛さんは、こんな風に語っています。

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「この包丁は切れ味抜群で、ずっと使っても大丈夫。1度研ぐだけで、300人分の料理を作れるくらい使えます。握り心地もまた、いいです」

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「(一般的には専用の包丁で行う)大根の桂剥きも、柳包丁でできてしまうんです。そのくらい、使いやすいんですよ」

ご主人が手に持つ包丁は、長年使いこんでいるにもかかわらず、厨房の灯を受けてきらきらと光っています。この包丁をつくったのが、鍛冶職人・飯塚解房さんだと聞いて、飯塚さんのいる『重房刃物』を訪れました。

細かな工程を丁寧に積み重ねていく、包丁づくり

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JR三条駅のほど近く、金属加工の会社が軒を連ねる一角にある『重房刃物』。三条鍛冶集団の師範で、『県央マイスター』や『にいがたの名工』など数々の認定を受けている飯塚解房さんと、二人の息子さんが包丁をつくっています。

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作業中にもかかわらず、「いらっしゃい」と快く迎えてくれた飯塚さん。まずは、包丁づくりにはどんな工程があるのか聞いてみました。

「細かい工程まで含めると数えきれないほどあるけど、おおざっぱに言えば30工程くらいかな」

いくつか工程を見せていただけないかお願いすると、中を案内してくれました。

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こちらは、『鋼付け』と呼ばれる、鉄と鋼を接合する工程。鉄と鋼を火床(ほど)という炉に入れて熱し、槌やスプリングハンマーで叩いて鍛接(たんせつ)していきます。この日は、次男の佳英さんが作業風景を見せてくれました。

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叩くたびに、熱された部分から火花が散ります。何度も叩き上げることで、金属の組織がきめ細かくなり、刃の切れ味が増すのだそうです。

次に見せてもらったのは、長男の正行さんによる『銑(せん)がけ』の工程。刃の表面にある凹凸を削り、平らにしていく作業です。

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時折、窓の光に透かして凹凸の具合を確認します。

そして、こちらが達人・飯塚さんの『研ぎ』。目の粗い大きな砥石で地金を落とした後に、だんだんと細かい目の砥石で刃を研ぎあげます。

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研ぐ際には、足元の水場で砥石に水をかけながら作業を進めます。

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黒っぽく見えるのは、刃から削られた鉄粉。

包丁づくりへの思い

ひと通り見学させてもらった後、飯塚さんに包丁づくりのことを、いくつか質問をさせてもらいました。

―こんな風に、たくさんの工程があるという包丁づくり。どの工程が一番大事なんでしょうか。

「どの工程も、基本通りにやることがすべて。全部の工程が大事だよ」

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ひとつひとつの質問に、静かに答えてくれる飯塚さん。

―では、飯塚さんにとって、良い包丁とはどんなものですか。

「包丁は道具だからね。使いやすさが一番。よく切れることは大前提だな。
これまでたくさんの包丁を作ってきたけど、100%うまくいったことなんて、ほぼない。
そのぶん、毎回できが違って、1本1本に個性がある。人間がつくるものだから、人間と同じで不完全なんだよ」

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―ものづくりの魅力は、どんなところにあると思いますか。

「鍛冶とかものづくりの魅力って聞かれると難しいけど、仕事自体が楽しくないといけないね。いろいろ試行錯誤しながらつくって、やり遂げたときの達成感というのは、どんな仕事でも同じだと思うよ」

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「鍛冶屋ってのは、表には表れない仕事なんだよ。包丁は、料理を作るための道具。つまりはモノをつくるためのモノ。それをつくるのが鍛冶屋の仕事だから、これからの職人にも、生活を支える道具としてじっくりとつくっていってほしいかな」

道具を作っていることを意識して、淡々とものづくりに取り組んでいってほしいと語る飯塚さん。50年以上包丁づくりに取り組んでいるというその言葉には、ずっしりと重みがありました。
私たちの生活に身近な道具・包丁。ひとつひとつ手仕事で丁寧につくられていく過程を知り、そこに込められた職人さんの深い思いを聞くと、日常を見る目も変わってきますね。

達人の話に感銘を受けたコメジルシくん、この魅力をみんなに伝えようと、撮った写真を早速Instagram(@niigata_komepro)で投稿していました。

「コメジルシくんが聞く!新潟の魅力」では、毎月コメジルシくんが「達人」に魅力を聞いていきます。来月もお楽しみに!

こちらの動画でも、達人・飯塚さんの包丁づくりの様子をご紹介しています!

「コメジルシくんが聞く!新潟の魅力」は、新潟県広報番組「週刊 県政ナビ」のテレビ放送およびその動画配信でもご覧いただけます。