やりたいことをこどもが自ら選択し、遊びきる。
長岡・寺泊の「海」と「山」がフィールドの
〈海辺のこども園 かいじゃり〉
目次
野外活動を中心とし、自然体験を取り入れた保育を行う「森のようちえん」。この「森」とは、なにも森に限らず、海、川、野山、里山、都市公園などを含めた広義なフィールドを指すのだそう。
長岡市寺泊の海岸沿いに立地する〈海辺のこども園 かいじゃり〉は、森のようちえんなどで経験を積んだ保育士夫妻が2019年に開園した“自然体験型”の認可外保育施設です。
海へは徒歩数分の距離、園の裏手には遊び場となる山。そんな自然豊かな環境と、保育士や地域住民の愛情という土台のもと、活動のなかで生まれる取捨選択、自己決定の機会を大切にした、こども主体の保育を行っています。そんな〈かいじゃり〉の一日と、園の思いをご紹介します。
〈海辺のこども園 かいじゃり〉
のある日の過ごし方
示された道順を頼りに、細い私道を抜けて出た先は、胸のすくような日本海を見渡す高台! そこに建つ昔ながらの日本家屋が〈海辺のこども園 かいじゃり〉。保育士の太田 真さん・真耶さん夫妻が運営する認可外保育施設です。
ここでは、さまざまな年齢のこどもがともに活動する“異年齢保育”が行われており、現在1~5歳までの7名が通っています。
「こんにちは!」と夫妻に迎えていただき園舎に入ると、1~2歳くらいのこどもたちが好奇心たっぷりの顔でお出迎え。その奥では3~5歳のこどもたちがテーブルを囲んでお絵描き中。顔や手に絵の具がついても構うことなく、熱心に筆を走らせています。
「10月半ばから始まる『寺泊つわぶき祭』の灯籠の絵を描いているんです」と真耶さん。これらの絵をラミネート加工して灯籠にし、イベント時にあかりを灯すのだそう。
そんなこどもたちの邪魔をしないように園舎内を見学させてもらうと、まず目に飛び込むのは、掃き出し窓12枚分から望む大海原。時間、日、季節ごとに変わる海の表情をつぶさに観察できるような大絶景が広がっています。
窓辺には、手づくりのサンキャッチャーや麦わらモビールなどがぶら下がり、こどもたちの創作の形跡がそこかしこに見られます。
かつて居間だったであろう20畳ほどの和室がメインルーム。広いテーブルには積み木やおもちゃの車が置かれ、小さなこどもたちが遊んでいます。
テラスでは、お絵描きを終えたこどもたちが真耶さんと一緒に茂みをゴソゴソ。しばらくすると「カマキリの卵と、ムカゴ見つけたー!」と見せに来てくれました。
「誰と、何を、どれだけするか」
をこどもたちにゆだねる
日々、園庭のかまどでご飯を炊き、汁物をつくり、お昼ごはんにするという〈かいじゃり〉。その日もかまどには火が焚かれ、湯気の立つお鍋がのっていました。
そのお鍋を台所に運んだあと、手際よく味噌を溶くのは5歳の女の子。聞けば、誰かに教えてもらったのではなく、使う道具も、味噌の分量も、溶き方も、大人のやっていることを見て覚えたのだとか。
一方、炊いたご飯を天地返しするのは3歳の女の子。お鍋いっぱいのご飯をこぼしそうになりながらも力いっぱい混ぜていきます。そんな姿をそっと見守る真耶さん。
同園のお昼ごはんは、各家庭から1品だけおかずを持参し、園で炊いたご飯と汁物でいただくのが主流です。おかずを食べ終えてもなお、「ご飯のお焦げがおいしい!」と、2杯、3杯と茶碗いっぱいにお代わりを重ねていくこどもたち。なんだか頼もしい。
お昼ごはんのあとの30分間は室内で過ごす「ゴロゴロタイム」。その間、1歳のこどもはお昼寝が始まります。
それ以外のこどもたちは「寝ている暇なんてない!」といわんばかりに元気に活動。室内でも、園庭でも、それぞれが過ごし方を自由に選択し、自分のやりたいこと、興味を持ったことで遊びきります。
季節ごとの活動や、自然に触れ合える環境のなかで、誰と、何を、どれだけするか。〈かいじゃり〉はこどもの自己決定の機会や考える過程を尊重し、さまざまな体験と経験のなかで自信につなげていく保育を理念としています。