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やりたいことをこどもが自ら選択し、遊びきる。
長岡・寺泊の「海」と「山」がフィールドの
〈海辺のこども園 かいじゃり〉 | Page 3

2024.10.23

地域住民のあたたかさにも
触れられる場所

〈海辺のこども園 かいじゃり〉の裏手には「はつじさんの山」と呼ばれる山があり、野山遊びのフィールドになっています。

青々と茂った「はつじさんの山」
園の裏手にある「はつじさんの山」。手前には鶏舎があり、16羽のチャボが飼われています。

はつじさんとは、園のすぐそばに暮らすご近所さんで、園の周辺一帯の地主さん。太田さん夫妻がここに住み始めた直後から、「おかずつくったから、よかったら食べて」「お風呂に入りにおいで」など、頻繁に声をかけてくれたといいます。

はつじさんだけでなく、「余ったから」「使わないから」とお米や野菜、冬場の薪などを持ってきては気にかけてくれる集落のみなさんの存在もありました。

「ここでなら自宅を開放するかたちで開園して、自然だけでなく、地域のみなさんのあたたかさにも触れられる保育ができるかもしれない、と思いました」(真さん)

開園への思いを相談すると「うちの裏山も遊び場として自由に使っていいから、やりたいことをやってみたら?」とふたつ返事で背中を押してくれたというはつじさん。今、こどもたちと耕している畑も、チャボの鶏小屋も、裏山も、はつじさんが「保育をするなら」と開放してくれている土地だといいます。

そこで遭遇する植物、昆虫、野鳥といった生き物に触れ、名前を覚え、成長過程を観察し、興味を広げ、好きを増やしているこどもたち。彼ら・彼女らの成長には、地域住民の存在も大きく関係しているようです。

鶏舎で飼われているチャボたち

消え入りそうな
“地域の文化”をつないでいく

現在、この集落に暮らすこどもは、太田さん夫妻のふたりのこどものみ。けれども〈かいじゃり〉の開園によって新潟市や長岡市から園児たちが通うようになり、「こどもの声が聞こえるだけで元気が出る」と地域住民の喜びの声が届くといいます。

トンカチを使う園児とサポートする真さん

そんな地域住民の提案で、かつて園の裏山にあったという古い散歩道を復活させ、こどもたちに遊んでもらおうという動きがスタート。

「はつじさんたちが幼い頃『今日はどの道にする?』なんて話しながら、桑の実を食べ食べ、友だちと学校へ通った散歩道なんだそうです。その当時と同じ体験を、今のこどもたちが体験する。〈かいじゃり〉という場所が、地域の文化をつないでいく一端になればいいなと思っています」

岩海苔やアオサなどを採って加工することも、打ちあがったクルミを五平餅にして食べるのも、地域のみなさんから「こんなことができるよ」と教わったこと。この地域で受け継がれてきたモノゴトを園の活動に織り交ぜ、伝えていきたいという真さん。

なにもなければ消えてしまいそうな、地域のなにげない日常や営みが、〈かいじゃり〉の開園をきっかけに再興しつつあるようです。

長い煙突のついたかまど
園庭にあるかまど。こどもたちが火起こしすることも多々。

こどもから大人まで、
すべての人を対象とした「週末自然体験」も

平日の保育園事業だけでなく、週末には0歳から未就学児と保護者を対象とした「親子参加 こじゃり」、主に小学生に向けた「楽童(がくどう)かいじゃり」という週末自然体験を実施している〈かいじゃり〉。季節にちなんだ海・山遊び、野外調理、畑仕事、散歩などのなかで、こどもから沸き上がる遊びを尊重した活動が行われています。

たくさんのライフジャケットが干されている

「楽童」では現在、参加している小学生と山中に道づくりをしているのだそう。かつてはウサギなどを捕まえたりしていたという山。いつしか草が生い茂り、行き来できなくなっていた古道を、こどもたちと一緒に蘇らせる取り組みを3年前からスタート。

「今、3分の2ほどが完成していて。道を振り返ったとき、活動のなかでの出来事や、道はこうやってできるということを、感じてもらえたらいいなと思っています」

0歳から小学生、はたまたいくつであっても、保育事業や週末体験を通じて生きる力を育み、人の温もりに触れられる〈かいじゃり〉。ご興味のある方は、まず「こじゃり」や「楽童」に参加してみてはいかがでしょうか。園見学は随時受付中。年度内の途中入園も可能です。自然をダイレクトに感じる環境で、こどもの自己選択を大切にした育みをしたいという方には、ぴったりな子育て環境かもしれません。

園舎内で遊ぶ園児たちと真耶さん

Information

浜辺のこども園 かいじゃり

web:浜辺のこども園 かいじゃり
Facebook:@浜辺のこども園かいじゃり

credit | text:林貴代子 photo:今井達也

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