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木に囲まれて過ごせる、こどもたちの居場所がたくさん!
新潟県産材が広げた、遊びと学びの選択肢

2024.10.30

新潟県には、木をふんだんに使ったこどもたちの施設がたくさんあります。木でできていると、なんだかやわらかいしホッと安心できますよね。そんな木造の施設を増やす事業が新潟県にはあります。

「ふるさと新潟木づかい事業」は、新潟県で育った木材(以下、「県産材」)を広くPRすることを目的に、公共的施設や商業施設の木造、木質化を支援する制度です。本記事では、木づかい事業を活用してこどもたちの遊びや学びの場づくりを進めているこども園、児童館の取り組みをご紹介します。

かまど小屋で、
「食べる」と「つくる」を学んでいく

新潟市東区にある岡山幼保連携型認定こども園(愛称〈きになる、こども園〉)。2000坪以上の広い敷地内には、0~2歳を対象とした岡山乳児園(愛称〈すやすや、乳児園〉)や、誰でも無料で利用できる〈地域子育て支援センターMere(メール)〉、高齢者を対象とした通所介護施設〈デイサービスセンターzutto・sottoずっと・そっと〉も併設されています。

〈きになる、こども園〉の外観
〈きになる、こども園〉という名前には、地域のみなさんから気になる存在でありたいという思い、こどもたちがここで大きな木になるように成長していってほしいという願いが込められています。

木づかい事業の活用を進めたのは、この園を運営する〈社会福祉法人岡山福祉会〉の理事長・斉藤勝栄(さいとうかつえい)さん。2016年に金融業界から転身し、こどもたちが生き生きと遊び、学べる環境をひとつひとつ整えてきました。

〈社会福祉法人岡山福祉会〉の理事長・斉藤勝栄さん
こどもたちに加え「働く人が幸せである環境をつくりたい」と話す斉藤さん。

この園の最大の魅力は、広々とした園庭。やわらかな芝生のうえで、こどもたちは裸足で元気に駆け回っています。斉藤さんが就任した当時、園庭の半分は未整備だったそう。そこから、こどもたちが自然に触れ合う機会を増やそうと、生き物たちの生育空間であるビオトープをつくったり、ヤギ小屋をつくったり。裸足で過ごせるようにと、芝生も整備してきました。

ヤギを笑顔で見つめるひとりの園児
お友だちとの関係づくりが苦手なこどももいます。動物と触れることが、多様な個性を持つこどもたちの心の成長につながればいいと考え、ヤギを飼い始めたそう。

こどもたちと触れ合うなかで、普段の生活スタイルが昔と大きく異なっていることを実感した斉藤さん。そこで、昔ながらの台所である〈かまど小屋〉をつくろうと、木づかい事業の活用につながっていきました。

「オール電化の広がりなど、さまざまな生活環境の変化で、火を使えばものが燃えて熱いということ、湯気でやけどをしてしまうことなど、感覚を得る機会が減ってしまっています。そこで、今の家ではなかなかできない、“昔ながらのかまどでご飯を炊いて、縁側に座って食べる”なんて体験ができたら、五感で学ぶいい機会になるだろうなと思うようになりました。とはいえ、新たな設備をつくるのにはお金がかかります。どう実現できるか調べていたときに知ったのが『ふるさと新潟木づかい事業』でした」(斉藤さん)

そうして完成したのが、県産材のスギを使ったかまど小屋。暖簾をくぐって中に入ると、木の持つぬくもりややわらかさに心がほっと緩むようです。自然由来の塗料を使っているので、こどもたちも安心して遊ぶことができます。

かまど小屋に集合した園児たち
かまど小屋でハイ、ポーズ!
かまど小屋にはご飯炊きのかまどが2つ
水を沸かしたら熱いお湯になる、ということも体験して学んでいきます。

「お米を炊いておにぎり会を開いたり、園の向かいにある農園〈元気ファーム〉で採れたさつまいもで石焼き芋をつくったりと、季節ごとの旬素材を味わっています。デイサービスの利用者が園庭を散歩して、かまど小屋でゆっくり休むことも多いんです。高齢者のみなさんがこどもたちと触れ合える空間にもなっていて、たくさんの癒しをもらっているのではないかと思っています」(斉藤さん)

かまど小屋の縁側に座ってくつろぐ、デイサービスを利用しているおじいちゃんおばあちゃんと園児
おじいちゃんやおばあちゃんから昔話を聞けるのも、かまど小屋があってこそ。
〈きになる、こども園〉の図書館で並んで本を読む園児たち次のページ|アトリエやツリーハウスもつくりたい!
県産材の活用はこれからも続く


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