新潟県内には、最北端の村上市から最西端の糸魚川市、離島の佐渡島にまで、美しい棚田景観があることをご存知でしょうか。
2022年、農林水産省が認定した「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」では、全国271の棚田が選定され、新潟県は8市町36地区が選ばれました。全国一の認定数を誇る新潟県は、正真正銘の「棚田県」なのです。
しかし、平地にある水田よりも「労力は2倍、収量は半分」ともいわれる棚田。新潟県内の棚田地域では耕作放棄地が年々増加し、地域課題となっています。
棚田の保全を目指して立ち上がった〈棚田みらい応援団〉とは、どのような取り組みなのかーー。発起人となる新潟県農村環境課、そして、棚田みらい応援団の活動に参画する企業と農家さんにお話を聞きました。
〈棚田みらい応援団〉とは?
新潟県では、過疎化・高齢化が進み、後継者不足が深刻化する中山間地域に向けて「何とか棚田を守りたい」という思いから、2009年に〈棚田みらい応援団〉が発足しました。新潟県農村環境課が主体となり、新潟県内各地域で田植えや稲刈り作業、地域の清掃や環境整備などの棚田保全活動を実施しています。
主な取り組みについて、新潟県農地部農村環境課 中山間地域対策推進係の風間勇人さんにお話をうかがいました。
〈棚田みらい応援団〉が中山間地域と企業をマッチング
棚田みらい応援団プロジェクトの活動には、新潟県内の企業、団体、学校が参加しています。
農作業や環境保全活動を通して中山間地域の人々と交流を深められるように、新潟県農村環境課が情報提供、活動・交流サポートを行うコーディネーターとなり、県内の事業者と中山間地域で暮らす農家をマッチングすることがプロジェクトの目的です。
2024年には、16企業、3大学、2団体が棚田みらい応援団の思いに共感し、参加しており、少子高齢化が進む中山間地域の人手を増やすことで「後継者不足の解消や交流人口の増加が期待できる」と新潟県農地部農村環境課の風間さんは言います。
「CSRやSDGsの観点から、棚田みらい応援団の活動に参加する企業さんは増加傾向にあります。これまでつながることのなかった農家さんと企業をマッチングすることで、新しい活動に結びつけていけるように活動を展開しています」(新潟県農地部農村環境課 風間さん)
企業にとっては、ボランティア活動や社員研修などの一環としても活用でき、発信力のある企業が参加することで、棚田地域の営農活動、引いては地域活性化にも寄与しています。
棚田を守る=暮らしを守る
田植えや稲刈り活動と聞くと、「棚田保全」=「おいしいお米をつくるため」という印象を持たれがちですが、棚田保全を進める意義はそのほかにもあります。
良質なお米をつくりながら、日本の里山の風景である棚田の美しい景観を守るため。さらには、棚田を維持することで地滑りや洪水などの災害を未然に防ぐ効果、森林の環境保全にもつなげられます。
「2019年に『棚田地域振興法』が施行され、各地域で棚田の保護計画が立てられるようになりました。新潟県の棚田には、雄大な山手の棚田があれば、佐渡市歌見や岩首のように海沿いの棚田もあります。
それぞれの地域に広がる魅力的な棚田を後世に残していくためにも、みなさんの協働が必要なのです」(新潟県農地部農村環境課 風間さん)
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佐渡市歌見では鬼たちが田植え 】