鬼の手にも稲穂!? 佐渡市歌見では鬼たちが田植え
棚田みらい応援団が行ってきた活動には、全国的にもユニークな取り組みがあります。佐渡市歌見では、地域文化も育む田植えが行われました。
歌見で農業を営む兵庫勝さんからは、「主催者目線の思い」を。田植え・稲刈りに参加した日本航空新潟支店副支店長の近藤一孝さんからは、「参加者視点の発見」をうかがいました。
鬼に扮して五穀豊穣を願う佐渡市歌見の「鬼の田植え」
2024年5月。日本海を一望できる佐渡市歌見の棚田で、棚田みらい応援団主催の田植えが開催されました。
参加者は企業、団体を中心とした総勢50名。鬼が田植えを手伝ったことでその田んぼが豊作になったという、佐渡の民話『鬼の田植え』になぞらえ、参加者は鬼に扮して田植えを行います。
「私たちの地域の棚田は、高齢化や担い手不足で耕作者が減り、放棄される棚田が増えました。危機感を覚えて始めたのが『鬼の田植え』です。
棚田の希少価値をPRすることで耕作者が増え、地域のお米を食べていただくきっかけになればと思い始めました。より多くの方に歌見の取り組みを知っていただくために、棚田みらい応援団への参加を決意しました」(佐渡市歌見 兵庫さん)
前回よりも参加者数が5倍以上に増えた佐渡市歌見での活動を経て、「みなさんに満足していただけるように、もっと工夫していきたいですね」と兵庫さんは意気込みます。棚田みらい応援団の支援は、地元農家さんたちのモチベーションアップにも影響していました。
企業が企業を呼び、どんどんと広がる支援の輪
日本航空新潟支店の近藤さんは、棚田みらい応援団に参加して4シーズン目。2023年には弥彦酒造、新潟酒販のサポートを受けて日本酒造りにもチャレンジしています。「米どころ新潟の魅力を発信したい」と、地域産業支援に力を入れてきました。
棚田みらい応援団に参加したきっかけは、新潟県食品・流通課と連携して2017年から国内線JALファーストクラス機内食で新潟県産米〈新之助〉を提供するようになったことでした。
「お米に関わる取り組みに参加したいと考えていた矢先、新潟県農村環境課さんの活動を知り、新潟支店メンバー、新潟空港スタッフ、全国各地で働く新潟県にゆかりのある客室乗務員に声をかけて『日本航空チーム新潟』として参加するようになりました。
地域の方々と泥にまみれて、汗をかいて、お話をしながら取り組む農作業はとても楽しく、とても貴重な体験になっています。それに、一緒に作業することで地域のみなさんに非常に喜んでもらえる。これが少しでも地域の活性化につながればと願わずにはいられません」(日本航空新潟支店 近藤さん)
『佐渡島の金山』が世界遺産登録前の、2024年5月に行われた佐渡市歌見地区の田植えには、JR東日本 新潟支社、佐渡汽船とともに参加。「世界遺産登録に向け、陸・海・空の交通事業社3社で盛り上げよう!」という近藤さんの熱い思いが、周囲を巻き込み実現したものでした。
「我々のような素人が半日だけ農作業に参加するのは農家さんたちの負担になるのではと心苦しいところもあったのですが、『もっと来てほしい』という言葉をいただけてとてもうれしいです。
農家さんと企業がつながり、棚田の保全にもつながる。支援の輪を広げていくことが私たち企業の役目なのかなと思いました」(日本航空新潟支店 近藤さん)
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