原材料のホップから始まる農家のビール
上越の田んぼに関わるなかで、お米以外の農業に関わることも増えてきました。現在はアスパラガスとホップを育てています。その理由は、耕作放棄地が増えたこと。
「自分が上越に来るようになった2014年頃は、もっと田んぼが多かった。でも10年以上経つと高齢化も進んで耕作放棄が増えてきました。そうした田んぼをお借りして栽培しています」

アスパラガスは農福連携の事業です。アスパラガスは収穫作業が比較的容易なので、障がい者の方に手伝ってもらっているといいます。社会福祉法人〈かなやの里ワークス〉に、栽培、収穫出荷を手伝ってもらっています。
ホップはツル性の植物で、高く育てていきます。まずは東京の高い「壁」から始めました。
「東京のAGRIKO FARM白金は、壁が高く、それをうまく利用したいと思って。冬も手をかけて何年も育てられる多年草がいいと思ってホップを育ててみたら、うまく育ったんです」
それを喜んで上越のおじさんたちに話したところ「そのへんに生えてるぞ」と。
「なんと私たちの田んぼの周辺にホップが自生していたんです。私は気がつきもせず……。つまり、その地域ではホップが育つ風土があるということが証明されたわけです。そこで耕作放棄地の畑にホップを植えてみました。新潟は地ビール発祥の地。原材料をつくる農家主体のクラフトビールをつくったらかっこいいなと思っています」
すでに東京産のホップでつくった〈ABEER〉というブランドのビールとして完成し、2025年4月から表参道にタップルームも稼働しています。

小林さんが農業に関わるきっかけは「趣味」だったかもしれません。でもそれを見事に昇華させて起業しました。東京の視点を持って上越へ。そしてしっかりと上越の農業にも入り込みながらその視点を生かす。どちらの感覚ももち合わせながら、農業の新しい価値を創造しています。
Information
【AGRIKO】
web:AGRIKO
credit text:大草朋宏 photo:松木宏祐 hair&make:野田芽依

