自分の目で見て、ものづくりを学ぶ。
現場をめぐる〈燕三条 工場の祭典〉
新潟県のほぼ中央で隣接している燕市と三条市は、ものづくりのまちとして知られています。江戸から入ってきた和釘の製造技術を始まりに、金属洋食器や農耕具、大工道具、刃物など金属加工で世界から注目を集める「燕三条」エリアにて、10月4日から7日にかけて〈燕三条 工場の祭典(こうばのさいてん)〉(以下、工場の祭典)という、今年で6年目を迎えるイベントが開催されました。燕三条でどんどん広がっているという、工場見学を地域全体で行い、各所で開催されるワークショップや職人技の実演を自ら巡って体感するイベントです。
そして、工場の祭典は待望の海外展開も実現し、外務省主導による日本を発信する事業「ジャパン・ハウス」のロンドン拠点〈JAPAN HOUSE London〉で、オープン後初のロンドン独自企画として「燕三条のものづくり」の展示が採択され、燕三条の金属加工をテーマにした企画展〈燕三条 金属の進化と分化(BIOLOGY OF METAL)〉を開催(10月28日(日)まで)。燕三条の職人らが現地に赴きました。
会場には、ケンブリッジ公ウィリアム王子や麻生副総理も訪れ、メイド・イン・ジャパンのブランド力が高まる昨今に、なかでも燕三条のものづくりがどうして高い評価を得ているのかを、職人自らがプレゼンテーションを通して、広く広報活動を行いました。
この、燕三条 金属の進化と分化展に出展し、今回の工場の祭典でも、燕三条地域のものづくりの過去と現在や、工場の祭典を始めたきっかけ、工場を開くことが地域にもたらしたことを、燕三条のみなさんに教えてもらいました。
〈燕三条 工場の祭典〉の拠点、三条ものづくり学校で、歴史とつくり手の想いを学ぶ
はじめに向かったのは、三条ものづくり学校。2014年3月に閉校した小学校をリノベーションして、企業のオフィス利用や飲食店、展示スペースなどを備えた、三条市のものづくり事業のハブとなっている施設です。
燕三条エリアでものづくりが盛んになったのは、豪雪地帯である新潟で冬にできる仕事ということで、江戸から伝わった和釘をつくり始めたことが関係しています。さらに、間瀬銅山で銅が取れたことから、銅の加工も始まったのだと言われています。
「この地域は企業城下町ではなく、たくさんの小さい会社それぞれにものづくりの技術が残っている地域なんです。工場をまたいで一緒にものづくりを行うことも多いため、地域で同じ進行管理のカレンダーを使っていて、“株式会社燕三条”なんて言うこともあるほどです」
と、地域の歴史を教えてくれたのは、三条ものづくり学校の事務局長、斎藤広幸さん。工場の祭典の1コンテンツであり、全国の衣・住・食の「産地」が集まる展示会およびマーケットイベント〈産地の祭典〉も取り仕切っており、工場の祭典は“工場”に限らない、燕三条という地を形成するさまざまな“こうば”をフィーチャーするのだと話します。
「2016年からロゴをアルファベット表記の“KOUBA”へと変更したのですが、製品を産み出すKOUBA(工場)だけでなく、農業に取り組むKOUBA(耕場)、地元の産品に触れ、購入できるKOUBA(購場)の意味も持たせています。燕三条のさまざまな“こうば”を巡って、ものづくりの魅力を存分に体感してください」
Information
【燕三条オープンファクトリー】
開催地域:新潟県三条市・燕市全域、及び周辺地域
年に1度の工場の祭典のほかに、通年で工場見学を受けつけている企業もあります。詳しくは、オープンファクトリーマップをご参照ください。
web:燕三条夢創紀行 工場見学
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