年間6000人もの見学者が訪れる、
鍛金の音が心地よい〈玉川堂〉
続いてやってきたのは上越新幹線・燕三条駅から車で5分、1816年創業の〈玉川堂〉。気持ちのいい前庭が特徴的な、築100年近いという古民家で、国の登録有形文化財に指定されています。
茶器や酒器、花器など幅広い銅器を製造している玉川堂は、1枚の銅板を鎚(つち)で叩き起こして銅器を制作する、鎚起銅器(ついきどうき)という伝統技術を継承しており、工場内には金属を叩く音が響いています。
この日は、燕三条 金属の進化と分化展開催中のロンドンから帰ってきたばかりの番頭の山田 立さんが話を聞かせてくれました。話をうかがっている最中にも、どんどん一般のお客さんが入ってきます。
「数十年前から見学はお好きにどうぞと工房を開いてきましたが、去年は1年間で見学者が6000名を超えたんです。6年前が600人だったので、6年で10倍、急激に増えました。5年前に工場の祭典を始めた影響でしょうか。私たちがやっていることは昔から変わっていませんが、ものづくりの現場を見ていただくということをひとつの観光資源にしながら交流人口を増やしていけるといいなと思っています」
「オープンファクトリーという動きはお客様に楽しんでいただけるのはもちろん、実は我々のメリットのほうが大きいと思うんです。リクルートだけでなく社内のインナーのブランディングや教育にもつながっていく。自分の仕事を紹介するために積極的に周りの仕事も勉強して、お客様と関わっていくようになりますし、悪いことはひとつもないですね」
工場の祭典ではほぼ1日かけて、職人の指導のもと1枚の銅板から成形していく工程をすべて体験できる、ぐい呑みづくりワークショップを開催しており、毎年応募が殺到する人気イベントとなっています。また、工場の祭典によって地域内はもちろん、産地のエリアを越えた動きもどんどん始まっているそう。古くから伝わる職人技が新しいインスピレーションと出会うことによって、どんな進化を遂げるのでしょうか。
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