ミリ単位の美しさを、職人の感覚と経験で仕上げていく
「柳宗理先生は頭で考えるよりも手で考えられる方でした。試作と修正を何回も行き来するなかで、途中で工程や金型を新しくつくり直すこともあるほど。長いものは1年以上かけて商品化していきます。工程を省いて安くつくることはできるかもしれませんが、それは“柳宗理デザイン”ではありません」
まずはモックとして石膏などで型をつくり、実際に手で持った感触からブラッシュアップをし、そこからようやく図面に起こします。図面ではなく、手からの感覚を製品に落とし込むのです。その“手でつくる”という精神は、工場の職人たちの手仕事からも感じることができます。
ミリ単位で調整された柳宗理デザインの製造で特に難しいのは、微妙な角度をつけること。手にフィットするカトラリーの柄、縁が丸くラウンドしたスプーンなど、口に運ぶことでより一層計算された美しさを感じることができるはずです。
技術が確かな職人と会社が一緒にものをつくってきた燕三条。そのため自社内ですべて完結するのではなく、ものが行ったり来たりしながら地元みんなで完成形をつくる伝統があり、日本洋食器でも金型制作は地元企業と一緒に行っています。つくることに対して真摯な人が集まっている地域だからこそ、細部まで妥協しないものづくりが実現できているのでしょう。