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〈シー・ユー・アゲイン・プロジェクト〉
都会から糸魚川へ、親子で里山留学。
全校児童20人の小学校で得られる学びとは? | Page 2

2023.10.25

年3回訪れるからこそできるつながり

そもそも糸魚川市が親子ワーケーションの取り組みを始めたきっかけは何だったのでしょう。プロジェクトを推進する、糸魚川市産業部の宮路省平さんは、「学校現場と行政、そして、仕事と子育ての両立に課題を抱える当事者みんなの思いが重なった」と話します。

糸魚川市産業部の宮路省平さん
プロジェクトの立ち上げからかかわる宮路さん。

「プロジェクト発足の起点は、人口減少が進むなか、県内外いろんな人のかかわりを増やしたいという思いでした。糸魚川市は、全域がユネスコ世界ジオパークに認定されていて、教育資源の豊かな地域なんです。化石探しやヒスイ拾いを通じて子どもたちは地質を学び、その間に親はリモートワークでワーケーションをする。そんな取り組みができないかと模索していたところ、長崎県五島市が“体験入学できる親子ワーケーション”を実践していると知りました」

フリーランスや会社員として働く親御さんとの出会いもあり、「仕事があって子どもになかなか自然体験をさせてあげられない」「地方への出張先で子どもへの学びの機会があったらいいのに」という声も多かったそう。

そこで、糸魚川市でも実施できないかと教育委員会に提案したところ、「1回の体験入学だけではもったいない」という返答があったといいます。年3回同じ子どもが来てくれたら、思い出も交友関係も深まるのではないかとプロジェクトの方向性が決まりました。

子どもと追いかけっこをする宮路さん
子どもたちともすっかり打ち解けている宮路さん。

「学校の先生たちも、行政で働く私たちも、子どもたちが減っていることに危機感があります。何とかしなくては、糸魚川市から子どもがいなくなってしまう。新しい一歩を踏み出そうという思いが重なり、2021年度からプロジェクトがスタートしました」(宮路さん)

始めてみると、体験入学の子どもたち同士が仲良くなり、親御さん同士がつながり、「スキー大会に一緒に出ましょう」とステイ期間外に糸魚川を訪れるケースも生まれました。年3回にわたって滞在するからこそできた関係性に、宮路さんも手ごたえを感じています。

宿泊施設の周りでサッカーをする子どもたち
学校が終わると、ワーケーション先の宿泊施設に戻ってくる子どもたち。虫を取りに行ったり鬼ごっこをしたり、元気に外を走り回ります。

「一度に受け入れられる人数に限りがあるので、これからも継続して、市内の受け入れ校を増やしていけたらいいなと思います。糸魚川で四季を味わい、子どもたちの記憶に楽しい思い出が残れば、いずれ『また旅行で行ってみよう』『長期滞在してみよう』と思うきっかけになるかもしれません。糸魚川の魅力を知る人たち、そして子どもたちのつながりを、ここから広げていきたいと考えています」(宮路さん)

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