〈シー・ユー・アゲイン・プロジェクト〉
都会から糸魚川へ、親子で里山留学。
全校児童20人の小学校で得られる学びとは? | Page 3
目次
都会ではできないことを、四季を通じて体感する
東京都目黒区から小学2年生の遊戈(ゆうか)くんと親子ワーケーションに参加している庭野由季さんは、「子どもの自然体験を求めて、たまたま目にしたのが糸魚川だった」と話します。
「夏休みの予定を決めようかと調べていたら、糸魚川市が親子ワーケーションをやっていると知りました。子どもは雪遊びが大好き。新潟にはスキー旅行で訪れたことがありました。糸魚川市は初めての地でしたが、普段と違う学校での勉強はいい体験になると思いましたし、年3回来れば四季の違いも感じられます。どこでも周りに馴染める性格の子だったこともあり、参加を決めました」(庭野さん)
遊戈くんからは「先生が自分の話をじっくり聞いてくれる!」とうれしそうに報告があるといいます。
「東京の小学校は、1クラスの人数が多くて毎日賑やか。いろんな子どもと遊べる良さはありますが、根知小の、少人数でゆとりある学びの場もとてもいいなと思います。自然体験のスケールの大きさも、ここならでは。広い畑で野菜や花を育てられることなど、すべてが新鮮みたいです」(庭野さん)
東京都渋谷区から参加した若林大崇(ひろたか)さんは、虫が大好きな小学4年生の碧(あおい)くんに「都会ではできない体験をしてほしい」と参加を決めました。
「親子ワーケーションだから、親が仕事をしながら、子どもを近くで見守ることができる。体験入学期間も出席日数として認められ、勉強を継続できる点も安心です。
入学初日は先生から声をかけてもらって馴染んでいったようですが、新しい環境で自分のことを知ってもらうためにはどうすればいいか、自分なりに考えて周りに話しかけるようになり、自主性がついたなと感じます。放課後には根知小の子どもたちがホテル近くまで遊びに来てくれるようになったり、地元の方に話しかけられるようになったりしています。新しい場所で人間関係をつくっていく姿が頼もしいです」(若林さん)
夜には、「おててこ舞」に出かけた3人の子どもたち。舞楽が奉納される日吉神社で、根知小の子どもたちと合流し、初めて見る舞楽をじっと見つめていました。
普段通う都心の小学校とは、自然環境も友だちも、放課後の過ごし方もまったく異なる根知小での滞在期間。「それぞれ違って、両方とも好き」という子どもたちの言葉に、親子ワーケーションを通じて“2つの居場所”ができる教育的価値に気づかされました。
さらに、受け入れ側の児童たちとの交流を重ねることによって、都心からの児童たちだけでなく、お互いに新しい学びを見つけるのかもしれません。
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シー・ユー・アゲイン・プロジェクト
credit | text:田中瑠子 photo:やまひらく