出雲崎の「手作り紙風船」ができるまで
磯野さんに、紙風船ができるまでの工程をご案内いただきました。
「まずは、紙に図柄を印刷するところから始まり、『紙組み(かみぐみ)』と呼ばれる工程に入ります。ここでは、紙を決められた順番に重ねていくんです」
続いては、紙を決められた形にする「型抜き」の工程へ。紙組みでできた紙束を、機械で切り抜いていきます。はぎれの紙は、さらに切り抜いてヒレや尻尾といったパーツにしたり、ワークショップなどで使ったりして再利用するのだそうです。
さて、型抜きが終わると、磯野さんは会社の外へ。とあるお宅のチャイムを鳴らしました。「ようこそ!」とにこやかに迎えてくれたのは、ベテランの“貼り子”・吉田すみ子さんです。
貼り子さんのお家で、紙を貼り合わせて球体にする「立貼り(たてばり)」の工程が行われます。
「紙風船の内職は生まれたときからおなじみで、私の母も主婦業をしながらよく貼っていました。姉も私も見よう見まねで覚え、今では何も考えなくても自然に指が動きます。繁忙期は家事をお休みして、これにかかりっきりになることも。多い日で200個くらいつくりますね」(吉田さん)
貼るときの手元に注目すると、なにやら見慣れない道具が。木箱の横に、弧を描く金属が設置されています。吉田さん、それは?
「これは“キカイ”と呼ばれるものです。紙風船のカーブにピッタリ沿っているので、湾曲した面もきれいに貼りやすいのです。キカイは7サイズあって、つくりたい紙風船のサイズに合わせて取り替えながら使います」
創業当初は平らな卓の上で貼り合わせる「横貼り(よこばり)」でつくっていたものの、作業がしにくかったことから、〈磯野紙風船製造所〉2代目が “キカイ”を発明。立貼りのスタイルを編み出したところ、一気に効率が上がり、大量生産が可能になったんだとか。現在では、デザインを印刷したものをキカイを使った立貼りでスピーディに仕上げているそうです。