縄文時代っておもしろい!そう思ってくれる人を増やしたい
そして、ミニチュア縄文土器づくりをしている間に、すっかり冷やしかためられた火焔型土器チョコも、型から取り出します。
ふたつの体験を終えた後に、もう一度縄文土器を眺めると、なんだか先ほどまでより解像度高く模様を眺められる気がしてきます。どちらもそれほど難しくないので、気軽に参加できます。友だちとワイワイでも、お子さんと一緒でも楽しめそうです。
普段は、笹山遺跡から出土した数万点の土器のかけらを、選定・照合し、復元作業に勤しんでいるという阿部さん。縄文時代の文化と深く関わり続けるなかで、「縄文時代の暮らしは、現代の暮らしのベースだ」と気がついたそう。
「大豆やクルミを食べたり、土器をつくったり、鍋をしたり。縄文時代は5000年以上前の文化なのに、現代の暮らしと大きく変わらないなと感じます。縄文土器の模様を眺めていると、細やかな模様を描いていたのに、途中でやめて、なぜかそのまま焼いちゃう人がいるのも興味深い。『どうして終わっていないのに、焼いてしまったんだろう?』『5000年前にも個性ってあったんだな』とか想像すると、どんどん楽しくなってきますよね」
貴重なものとして扱われる縄文土器ですが、阿部さんの話を聞いていると、縄文人も案外、私たちと同じく“いい加減”だったのかも。
「最近は縄文ブームともいえる流行で、〈東京国立博物館〉での展示や映画『縄文にハマる人々』の上映や、フリーペーパー『縄文ZINE』発行など、縄文時代にまつわる新鮮な話題も増えてきました。〈伊乎乃の里・縄文サポートクラブ〉の体験アクティビティをきっかけに、縄文時代ってちょっとおもしろいかも、と思ってくれる人が増えたら、すごくうれしいです」
多くの人にとって、「近くて遠い存在」ともいえる縄文時代。けれど、阿部さんは「食べものに模様、うつわ、染めもの、自然環境、精神性。縄文時代をひも解くキーワードは非常に多様だからこそ、十人十色の親しみ方がある」といいます。
もしかしたら、縄文時代への扉は、思っているよりもずっと身近にあって、しかも大きく開かれているのかもしれません。
縄文文化や火焔型土器についてもっと学んでみたい人は、『新潟文化物語』へ。
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credit text:伊佐知美 photo:石阪大輔(HATOS)