日々の食卓を華やかに演出する、メイド・イン・新潟
瓦づくりから生まれたお皿、保冷・保温力に優れたタンブラー、切れ味抜群の包丁。このテーブルで使用されているアイテムはすべて“新潟産”です。これらはいずれも古くから受け継がれてきた技術を生かし、現代のライフスタイルに合わせた商品として展開されています。日本国内だけでなく世界に認められている新潟県のものづくり。日々の暮らしに取り入れたくなる、メイド・イン・新潟のアイテムをご紹介します。
今回メイン料理とサラダに使用したのは、〈TSUKI〉と名付けられた器。2016年に誕生し、独特な色と表面に見られるシワの表情が月のようであることから命名されました。
〈TSUKI〉がつくられているのは、180年以上の歴史をもつ「安田瓦」の産地・新潟県阿賀野市。安田瓦は、1200度以上の高温かつ還元焼成(焼締め)を用いてつくられ、吸水率が低く、断熱性や耐寒性に優れているのが特徴です。
そのザラザラな質感は、雪かきの時に滑り落ちないという雪国ならではの機能性を備えており、一般住宅の屋根はもちろん、新潟市の旧県会議事堂・旧税関や、近年では県知事公舎など由緒ある建物にも使用されています。
しかし、屋根瓦の需要が減少し、最盛期に25社以上あった製造元も今では2社までになってしまったそうです。そこで立ち上がったのが〈丸三安田瓦工業株式会社〉でした。
「このまま需要が減り続けてはマズイと思いまして。手に取って見てもらえるものをつくって、安田瓦についてまずは知ってもらいたいと考えました」
そう話す取締役の遠藤俊︎さんは、〈NICO(にいがた産業創造機構)〉に相談し、デザイナーの梅野聡さんを紹介してもらいます。梅野さんは15年ほど前から地域プロダクトのデザイナーとして活躍しており、もともとあるプロダクトの機能を生かしてリデザインすることを得意としています。すぐに安田瓦のプロジェクトにも賛同し、2015年に〈TSUKI〉の開発がはじまりました。
安田瓦の美しさを知ってもらいたいと、〈TSUKI〉は瓦と同じ素材を使ってつくることになりました。しかし、焼き方が瓦とは異なるため、当初は思い描いたシワ模様を出せずに苦労したといいます。遠藤さんと梅野さんはさまざまな焼き物の産地に足を運び、器づくりを学びました。そうして、1年の時を経て〈TSUKI〉は完成したのです。
2016年1月に、国内に先がけてフランス・パリで行われた国際見本市〈メゾンエオブジェ〉でお披露目となり、今ではパリ、NY、香港、タイなどでも販売されています。瓦づくりから生まれた新潟産の器が、海外のテーブルでも重宝されているとは誇らしいですね。
耐久性に加えて、グリップ性がよく、料理がすべらない〈TSUKI〉。シンプルでどんな料理とも相性がよく、食材を引き立たせてくれる器です。
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