新潟のアイコンが詰まった雪国旅のスタート
東京から上越新幹線に乗り高崎を越えると、中山トンネルに突入します。湧水地帯を避けて掘られたトンネルはS字を描いていて、新幹線は一時減速。抜けたと思ったらまたトンネル。長くて暗いトンネルがより長く感じられます。大清水トンネルをやっと抜けると、車窓は一変、雪に包まれた白銀の雪景色。その美しさは文豪も小説の書き出しにしてしまうほどです。
“国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。”
こんなふうに川端康成『雪国』の一節を思い浮かべてしまうのは、わたしだけではないはず。ほかに新潟と聞いて、思い浮かべるものといえば「雪、米、酒」ではないでしょうか。そのすべてを感じる1泊2日の「雪国旅」を体験するためツアーを実施。3月の越後湯沢駅に降り立ちました。今回はその様子をレポートでお届けします。
〈スノーガーデン〉で新しい雪の楽しみ方
ウィンタースポーツを楽しむ人には、新潟のスキー場は東京からの近さもあって身近な存在です。でも、そうでなければなかなかなじみのない場所でもあります。そんななか、関東最大級の広さを誇る老舗の〈石打丸山スキー場〉が新しい試みを始めました。スキーやスノーボードをしない人でも雪山観光が楽しめる〈スノーガーデン〉を、2021年シーズンよりオープンしたのです。
ゴンドラはシートが悠々としていて非常に快適。大きな窓からは越後の山並みに囲まれた魚沼平野が遠くまで続く絶景が望めます。
〈スノーガーデン〉で目を引くのは、なんと言っても透明なドームテント。室内はオイルヒーターで暖められていて、軽装でくつろぐこともできます。
「このドームを通じて、雪国文化を感じてもらいたいと思っています。たとえば、このテラスは棚田をイメージしてつくりました。このドームで雪国の食文化『雪室(ゆきむろ)』も楽しんでもらえるようなコンシェルジュサービスも検討しています」(石打丸山スキー場の勝又健さん)
ウィンタースポーツができなくても、来シーズンもこの雪山へ来てみたくなりました。それに、次はスキー体験もしてみたいかも。
Information
地元のおかあさんとつくる「土間クッキング」
ランチは六日町の古民家ホテル〈ryugon(りゅうごん)〉の「土間クッキング」で。地元の方に教わりながら、一緒に食事をつくるというもの。宿泊客でなくても前日までに予約すれば体験することができます。
クッキングはかまどに火をくべるところからスタート。今回の講師は〈ryugon〉の近所に住む料理の達人・関アツ子さんです。お茶請けに出された関さんお手製のたくわんをかじりながら、けんちん汁の準備。片やかまどではお釜が沸騰して、コトコトとフタが動く音がし始め、土間じゅうにご飯のいい香りが広がります。
待ちに待ったランチは、関さん特製の山菜料理が並びます。どれも雪国ならではの保存食。この山菜たちは昨年採られ、魔法の手仕事で風味と歯ごたえを残し、うまみを膨らませています。炊き上がった南魚沼産コシヒカリは真珠のように美しく、背筋が伸びるような甘さが広がりました。
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