新潟のつかいかた

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心のふるさと十日町に移住して
〈妻有ビール株式会社〉を起業。
高木千歩さん Posted | 2023/10/12

ホップ栽培にも挑戦する女性醸造家

清津峡や松之山温泉をはじめ、〈大地の芸術祭〉の開催地としても知られる十日町市。自然豊かなこの地に、高木千歩さんが営む小さなビール醸造所〈妻有(つまり)ビール〉があります。高木さんが目指すのは、奇をてらわず、どの世代にも受け入れられる“地域にしみこむ”クラフトビール。定番ビール3種に加え、季節限定が4~5種類あります。

〈妻有ビール〉のクラフトビール5種類
ラベルデザインは、昔から十日町市で織られてきた着物の柄をそのまま使用。左からオレンジピールが香る定番商品〈めでたしゴールデンエール〉、オーガニックレモンの香りが印象的な〈繋ぐエール〉、ヘイジーIPAらしい華やかさが人気の〈妻有の霞〉、クセがなく飲みやすい、こちらも定番商品の〈豪雪ペールエール〉、柏崎市で育った小麦を使用し、里山に咲くあんにんごの花の香りをつけた〈柏崎ウィートあんにんごの花〉。

8月某日、高木さんを訪ねて十日町市へ。この日は、ホップの収穫体験イベントがあるということで、山あいにあるホップ畑に同行しました。実は高木さん、ビールづくりと並行して、オーガニックのホップ栽培も行っている、県内でも数少ない醸造家なのです。

ホップの収穫の様子

手摘みしたホップをザクッと割って、見せてくれました。

「この真ん中の黄色い部分がルプリンといって、ビールの苦味や香りのもとになる成分です」

鼻を近づけると、グレープフルーツのようなすがすがしい香りが広がります。

ホップを割った状態。粉々した黄色い部分がルプリン

「ホップはペレット状に固められた既製品を使うのが一般的なので、農作物だということをつい忘れがちです。でも自分で栽培すると、その年によって、ホップの色や香りが微妙に違うことがわかり、『ビールの原材料って、畑からできるんだよね』と、あらためて感じることができるんです」

木になったホップ

手がけるホップは、ソラチエースやクリスタルなど10品種。畑は、地域の人たちの協力もあって、耕作放棄地を再開墾するところから始めたそう。

複数人でホップを手摘みする様子
明るく、飾らない人柄で、誰とでも気さくに会話を楽しむ高木さん。収穫イベントには県内外問わず、妻有ビールを愛する人たちが集まりました。蔓ごと収穫してから、ひとつひとつていねいに手摘みします。
蔓に何個もなったホップの雌花

「実は十日町市は、昭和30年代まで大規模なホップ栽培が行われていたんです。いまの畑は、その頃栽培に携わっていた80代のおじいちゃんに当時の写真を見せてもらいながらつくりました。最初の年は張り切って200株植えたんですけど、20株しか育たず大失敗。翌年、株数を半分に減らし、3年目からようやく収穫できるように。今年が4年目です」

収穫された大量のホップ

今回、収穫したフレッシュホップを使ったビールは、(2023)年内に第1弾が完成予定。

「昨年は2回、仕込みました。今年はクラウドファンディングのおかげでタンクを増やすことができたので、3回くらい仕込めるといいなと思っています」

ホップを原料としたフレグランスオイル
醸造で使いきれなかったホップは、十日町市産のアロマオイルの蒸留を行う〈リリー・ガーデン〉と共同でフレグランスオイルとして販売。

ビールをつくりながらホップを育てるのは容易なことではありませんが、それでも続けようと思うのは、畑がみんなを結びつけてくれるからだと言います。

「作業をしていると、地域の人たちが、『今年はいいねー』とか『やってるねー』って声をかけてくれるんです。また今回のようなイベントを通じて、妻有ビールを身近に感じ、応援してくださる方も大勢います。みんなをつないでくれるので、自家栽培ホップを使ったビールは『みんなのエール』と名づけました」

太陽の光を浴びるホップ
醸造ルームで計器をチェックする高木さん

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