family-series-ikumen-001-ec

男性の育休取得率100%!
〈サカタ製作所〉が新潟から発信、
育休が社員と会社も成長させる

2023.9.13

男性の育休取得が実現できる理由

「赤ちゃん育児のワンオペはしんどい。もっと夫の力を借りたかった……」。出産と育児を経験した女性は、きっとこんな風に感じたことがあるかもしれません。数年前から男性の育休(育児休業)推進の動きはあるものの、いまだに世の中には浸透していないのが実情……。

そんななか「男性育休取得率100%」を実現し、「残業ゼロ」を会社方針に掲げる会社が新潟県長岡市にあります。金属屋根部品の製造・販売を主力とする〈サカタ製作所〉です。2016年には一人当たりの残業時間数は月に約1時間までに減少し、2018年には厚生労働省の「イクメン企業アワード2018」の両立支援部門でグランプリを受賞。

サカタ製作所の代表・坂田匠さんに、2017年からスタートした男性の育休取得を強化した経緯について伺いました。

インタビュー中のサカタ製作所の坂田匠社長
サカタ製作所の坂田匠社長。

「きっかけは、ある男性社員が育休をとるのは言い出しづらいと悩んでいたことです。私は『育休をとればいいじゃないか!』と直接伝え、ほかの社員が大勢いる前で彼の上司に『何か問題はあるのか?』と聞きました。もちろん答えはノーです(笑)」

サカタ製作所では、これまでにも男性の育休取得を勧めていましたが、なかなか根づかなかったそう。会社のトップが「男性も育休をとろう!」と宣言し、きちんと仕組みをつくることで、いまでは育休取得は当たり前の企業風土が醸成されています。

男性が育休取得をためらう理由の多くは、同じ部署内のメンバーに迷惑をかける可能性があることかもしれません。しかし、サカタ製作所では、“担当者しかできない仕事”を徹底的になくすことで、メンバーが休んでも仕事を回せる仕組みができています。

サカタ製作所の製造現場
製造現場の様子。グループ内の仕事はメンバー全員ができる体制に。

もうひとつの不安といえば、経済面。育休を取得するとその間の給与が支払われない場合が多くありますが、実は国の育児休業給付金制度による支給金でカバーできます。また、社会保険料が免除され、所得税や翌年の住民税が少なくなるうえ、新潟県の助成金*1により、実質的には育休取得前の収入とさほど差は出ないそう。総務部では、育休をとる前にトータル所得を明確にした「収入シミュレーション」を該当社員ごとに作成し、経済的な不安は皆無であることを説明しています。

*1 サカタ製作所では新潟県の「パパ・ママ子育て応援プラス認定」企業向けの助成金「男性の育児休業取得促進助成金」を活用。

そのほかにも、サカタ製作所では、子育てしやすい制度を取り入れています。例えば、有給休暇を1時間単位でとれる制度や、小学4年生未満の子育てを目的とした短時間勤務制度など。もちろん、育休明けに部署異動されることはなく、歓迎ムードで迎えるのが恒例となっています。

インタビューを受ける坂田社長
製造現場のテレワークなど、一般的に非常識と思われることに挑戦するのがワクワクすると話す、坂田社長。

「育児を経験した社員は、いい顔つきになるんですよ。会社の雰囲気も明るくなりますね」と坂田社長。男性社員の平均育休取得日数は154.7日(2022年実績)で、1年の間に分割してとるケースが多いようです。束の間の育児参加ではなく、長い期間子育てに携わることが大事だと坂田社長は言います。

「女性は育児をするのが当たり前、それなのに男性はほんの少し育児に参加するだけでイクメンと褒められる。これって変ですよね? たった1~2週間の育休では、育児をただ体験しただけに過ぎません。一定期間、赤ちゃんの世話をすることで、子育ては日常になります。そうすると奥さんとも理解し合えて、仕事にもいい影響が出ますよ」

パソコンモニターを確認する坂田社長と社員
フロアにいるのが珍しくないという坂田社長。

「わたしはサカタ製作所の取組みがほかの企業でも当たり前のものとなっていけば、世の中は大きく変わる、と本気で思っています。サカタ製作所で成功すれば、ほかの企業でもできる。働き方や企業のあり方を今後もここ、新潟から発信していきたいですね」

サカタ製作所の3人の社員の方々次のページ|
社員が語る「育休のリアル」


次のページへ →

よく読まれている記事

よく読まれている記事