北欧発祥の野外幼児教育。大自然の中で過ごす
〈森のこども園 てくてく〉ってどんなところ?
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森や海、里山や畑など、自然の中で子どもたちを育てようという思いから、全国約300拠点で活動が広がる「森のようちえん」。もともとはデンマークやスウェーデンなど北欧諸国で始まりました。自然体験活動をベースに子どもたちを育てる試みとして、現在では全国の各運営者がそれぞれの思いで森のようちえんをつくり上げています。
今回訪れたのは、上越にある〈森のこども園 てくてく〉。園長の小菅江美さんが、2004年に設立し、以降、思いに賛同する保護者と一緒につくってきた園です。2021年4月から認定こども園となり、保育料は無償に。また、送迎があったり給食が提供されていたりと、時代に合わせて変化し、共働き家庭の預け先の選択肢のひとつにもなっています。
子どもたちはここでどんな1日を過ごしているのでしょう。森の中の活動を通じて、小菅さんが大事にしている思いを聞きました。
やりたいことを決めるのは子どもたち
上越妙高駅から車を走らせ約15分。里山の景色を抜け、木々のトンネルを進んでいくと、そこにあるのが〈森のこども園 てくてく〉です。
豊かな緑の中、ツリーハウスや茅葺(かやぶき)堂、焚火台など、子どもたちの遊び場が広がります。そのすべては、森の木を生かして、保護者や子どもたちと一緒につくってきたのだそう。手づくりの森の拠点には、3~6歳の園児24人が通っています。
朝8時半、子どもたちがひとり、またひとりと登園してきます。
長袖、長ズボン、長靴、帽子が子どもたちの基本スタイル。〈森のこども園 てくてく〉では、週に何回か1日を森の中で過ごすので、この格好が一番安全で、一番動きやすいのでしょう。全員が揃うまで、木のブランコで遊んだり、トカゲを見つけて追いかけたり、森小屋で絵本を読んだり。各々が好きなことをして過ごします。
こども園の1日は、9時15分の「朝の集まり」から始まります。
丸く置かれた木のベンチに座って、今日1日の過ごし方や、こども園でやりたいことなどを、先生と子どもたちが一緒になって話し合います。大人が子どもに対して一方的に何かを教えたり、話したりということではなく、意見を言い合うのが〈森のこども園 てくてく〉が大事にしていることです。
集まりが始まっても、ブランコで遊んでいる子や土遊びに夢中になっている子もいて、全員が揃うわけではありません。「大人の指示で集まらなければならない、という意識ではなく、自分で区切るということを大切にしています」と園長の小菅江美さん(通称えみさん)は話します。
「ベースにあるのは『主体は子どもにある』という考え方です。1日の活動は、午前中に森の散歩、お昼ごはんを食べたら絵本の読み聞かせや造形活動など、大まかなスケジュールはあります。でも、やりたい子が来てくれたらそれでいい。大人は環境を用意しますが、やりたいかどうかを決めるのは子どもたちなんです」