北欧発祥の野外幼児教育。大自然の中で過ごす
〈森のこども園 てくてく〉ってどんなところ? | Page 2
目次
子どもたちひとりひとりの役割を大切にする
取材に訪れたこの日、森の散歩で木登りや虫取りを楽しむ3~4歳の子どもたちと、お昼に食べる“お汁”をつくる5~6歳の子どもたちとが、それぞれ分かれて活動していました。
マッチで火をつけて、火を焚くのも子どもたち。包丁を使って、園の畑で収穫したにんじんを切るのも子どもたち。「豆腐を切るときは、手のひらを使うんだよ」と子ども同士で教え合いながら調理が進んでいきます。
大事にしているのは「自然を感じる・暮らしをつくる・子どもの力を信じる」の3つの思い。
自然に触れているから、子ども同士の関わり合いが生まれると小菅さんは言います。
「日々変化していく様子に子どもは引きつけられます。自然に動くものがあふれているからこそ、大人が介して子ども同士をつなげなくても、『虫があっちに行ったぞ』『よし、見に行ってみよう』などと子どもたちの対話が生まれる。私たちが必要以上に関わらなくても、自然の生き物や木々の変化が保育を担ってくれています」
また、「暮らし」を通じて育まれる心の成長にも、小菅さんならではの思いがあります。
「〈森のこども園 てくてく〉の給食は、管理栄養士さんによる自園調理の献立で、園で育てた野菜もたくさん使われています。また、自分たちで調理して食べる活動も、定期的に行います。ガスや電気のない森の中で、生きるための食事を、子どもたちが自分の手を使ってつくっていきます。子どもたちひとりひとりに役割があって、暮らしをつくることで、自分たちに価値があるという自己肯定感が高まっていくんです」
自由に過ごす子どもたちの姿に、入園を希望して見学にくる保護者から「集団行動が苦手になるのでは……」と質問されることも少なくないと小菅さんは笑います。
「私は、個に力があることが大事だと思うんです。主体的に動ける力を持った“個”が集まれば、集団は強くなる。子どもたちが、自然に教え合ったり、助け合ったりする姿を見て、そう感じています。大人が決めたやり方を指示するのではなく、『どう思う?』『何をしたい?』と、きちんと意見に耳を傾けることが、子どもの力を引き出していくと考えています」