兵庫県出身で2021年に新潟へ居を移した新潟ふしぎさん。新潟の独特の文化や方言、不思議なこと、すてきな場所やものをインスタグラムで発信するようになりました。運営開始から４年余り経った2025年６月現在、フォロワー数8.4万人。208万人いる新潟県民の25人に１人に相当する人がフォローする人気アカウントとなっています。

住み始めて出会った、
新潟の不思議と魅力を発信

新潟ふしぎさんが最初にインスタグラム投稿をしたのは、大学卒業後に新潟県内の企業に就職したばかりの2021年４月９日のこと。それまで新潟には縁もゆかりもありませんでした。きっかけとなったのは、当時、関西に住む弟さんから新潟県内の大学を受験すると言われたこと。その時に新潟での暮らしを意識し、直感的に移住を決意したのだとか。住み始めてすぐに感じたのが「関西と新潟は同じ日本なのにまるで、違う国のよう。興味深いし、魅力的だ」ということでした。

新潟で遭遇する初めてのものごとに魅力を感じていた新潟ふしぎさんに対する地元の人の反応は、「どうして何もない新潟に？」というものばかり。「新潟はこんなにすてきなのになぜ？ 移住者の私だから気づく魅力なのかも」と思ったことが、インスタグラムの投稿につながりました。

最初は主にテキストで、新潟で遭遇した興味深いことを発信していた新潟ふしぎさん。その内容は、方言や雪国らしい設備や表現、食文化にも及びます。新潟でよく食べられる食用菊の「かきのもと」のことも取り上げました。

「菊は仏花のイメージがありました。それなのに野菜売り場で売られていて、しかもお浸しにして食べると知ってびっくり。今では新潟の食べ物で一番好きです」

花火、カニ、新潟米。
SNSでは外国人にも、リアルでは友人たちに大好評

現在は新潟の観光情報を中心とした写真や動画が人気。主に週末に広い新潟県内を、新潟市内、佐渡市、十日町、村上市に糸魚川市と縦横無尽にお出かけしては、ハッとするほどきれいな動画で発信しています。

「新潟の人にとっては当たり前の景色も、私にとってはジブリアニメのような世界なんです」と佐渡の〈北沢浮遊選鉱場〉や十日町の〈越後まつだい里山食堂〉の名前を挙げます。

特に十日町のアート作品群はお気に入りで、パスポートチケットを購入して、自宅のある長岡市から何度も通うほどだとか。

新潟ふしぎさんの投稿のなかでも、680万回も再生されたのが長岡花火です。８月に信濃川で行われ、日本三大花火のひとつでもある長岡花火は、打ち上げ会場が３キロメートルに渡り、しかも約２時間もの間、ずっと花火が打ち上げられる日本最大級の規模です。

「長岡の花火は大きすぎて、画角に収まりきりません。投稿には海外の方からも『日本の花火はすごい』とコメントがありました。新潟のみなさんにとって、花火は誇りですね」

最近、訪れたなかで印象的だったのが、糸魚川市にある道の駅〈マリンドリーム能生（のう）〉の名物、〈かにや横丁〉。カニを売るお店がサービスしてくれると聞いて訪ねたところ、「予想していた以上にたくさんカニをサービスしてくれたんです。カニをその場で割って食べるのも楽しかったです」と、すっかり気に入った様子。

新潟ふしぎさんの発信を楽しみにしている県外の友人たちも、新潟を訪ねてくることがあります。

「友人はドライブしているだけでも山や田んぼの景色に喜んでくれます。新潟のお米、特に越後湯沢駅の〈ぽんしゅ館〉内〈雪ん洞〉で買える、１合と４合の『爆弾おにぎり』も大好評でした。４合はお茶碗約８杯分とのことで食べることに必死でした……！」と、SNSだけでなくリアルでも新潟のよさを広めています。

「ゆっくりでいいよ」
にある雪国の助け合い

景色にグルメ、土地の文化に今も感動があるという新潟ふしぎさん。住み始めてから間もなく感じたことのひとつに、関西に比べて時の流れがゆっくりだというものがありました。話す言葉もゆっくり、行動もゆっくり。

「待ち合わせの時間に遅れそうになると、新潟の人は必ず『ゆっくりでいいよ』と言ってくれます」

スーパーなどで買いたい商品の場所を尋ねると、商品の前まで案内されることも思いがけないことでした。

「関西では『〇〇コーナーです』などと言われて終わりということが多いので、人を大切にしているから時間をとって対応しているんだと感じました」

新潟育ちの人たちにその驚きを話したところ、「それは雪国文化だ」と言われたそう。雪が深くなればなるほど助け合い、雪にはまった人がいれば知らない人でも助けるもの。「そういう新潟の県民性も大好きです」と日々新潟に魅力を感じています。

移住して４年余りとなった今も、新潟にある不思議な魅力はまだまだ発信しきれていないという新潟ふしぎさん。もっと新潟のすてきなところを知ってほしいと、今後は新潟のお菓子やお土産などをYouTubeなどで発信する活動も行っていくそうです。

credit　text：野崎さおり