新潟のつかいかた

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厳しくも豊かな
風土が育む食文化。
世界に誇る新潟の“ごっつぉ” Posted | 2025/04/11

47都道府県で5番目に面積が広い新潟県は、上越、中越、下越、そして佐渡と、地域によって地形も気候もそれぞれ。おいしい食材や料理が数多くあるのは、地域ごとの特性が生み出したものです。その食文化を全国に発信しようと奮闘している方々がいます。今回は、阿賀町で〈パンとおやつ 奥阿賀コンビリー〉を運営する柳沼陽介さん、新発田市にある〈菊水酒造〉で、4月29日オープン予定の〈KIKUSUI蔵GARDEN〉の立ち上げプロジェクトを担当する南波麻美子さん。そしてコラムニスト・美食評論家の中村孝則さんに話をうかがいました。

山に自生する「オニグルミ」に注目

柳沼陽介さんは福島県出身。東京を経て、2016年に阿賀町へ移住して、パンとおやつ奥阿賀コンビリーを開店しました。地域の産品として阿賀町周辺の山に自生している「オニグルミ」の存在に注目。その理由を、「よく売られているカリフォルニア産洋グルミより、オニグルミはえぐみが少なく、コクもあっておいしいんですよ」と話します。

皿に盛られたオニグルミと、オニグルミのグラノーラなどの商品が並ぶ
オニグルミと柳沼さんが手がける商品たち。

森に自然になっているオニグルミは地元の人たちにとっては日常の食べ物。特産品という意識はまるでない、隠れた地域資源でした。

そのオニグルミを生かそうと、柳沼さんは地域のおじいちゃんやおばあちゃんが集めたオニグルミを買い取り、かたい殻から可食部を取り出す作業を地元の福祉作業所に依頼して工賃を払い、パンやお菓子、グラノーラに加工して販売する仕組みをつくりました。

虫めがねとピンセットを使ってオニグルミから食べられるところを取り出す作業
殻から可食部を取り出す作業の様子。
オニグルミ入りのカンパーニュ
オニグルミのカンパーニュ。

オニグルミを持ってきたら奥阿賀コンビリーのパンと交換する“クルミ通貨”の仕組みや、出土した土偶や岩偶を取り入れた「縄文土偶かるた」をつくるなど、今まで注目されてこなかった地域の特徴に自然と目が向けられる仕組みもつくっています。

縄文土偶かるた

現在、オニグルミの商品は都内の有名百貨店や生協、自然食品店でも販売されているだけでなく、東京・足立区にパン屋〈パンいつぞ〉を開いて、新潟県外の人に魅力を届けています。

菊水酒造が「発酵」をテーマにした施設をオープン

南波麻美子さんが勤務する新発田市の菊水酒造は、明治14(1881)年創業。千本桜で有名な加治川沿いにあり、コンビニやスーパーでもよく見かける缶入りのお酒〈ふなぐち〉の蔵元です。

缶入りのお酒〈ふなぐち〉と料理がテーブルに並ぶ
〈ふなぐち〉とそら豆と菜の花の八宝菜。

その菊水酒造が、2025年4月29日にオープンするのが発酵エンターテイメント酒蔵を体現する新施設、KIKUSUI蔵GARDENです。南波さんは建物設計、コンセプト立案、企画を担当しています。

〈KIKUSUI蔵GARDEN〉の外観イメージ
外観イメージ。

菊水酒造では、徳利や杯台などの酒器や書籍など合わせて3万点にも及ぶ収蔵品を持つ〈菊水日本酒文化研究所〉を2004年に設立し、日本酒にまつわる文化を伝えてきました。菊水日本酒文化研究所は菊水酒造の敷地内にあり、同敷地内に新設するKIKUSUI蔵GARDENは発酵がテーマです。ショップ、ラボ、カフェを備えることになっています。

ラボでは、日本酒だけでなくビールやコーヒー、パンなど多様な発酵の魅力に触れられるワークショップを開催予定。カフェでは枯山水の庭を見ながら酒粕を使ったスコーンやチーズケーキが食べられます。敷地内ではマルシェなどのイベントも開かれる予定で、近隣の方はもちろん、観光拠点のひとつとして観光客も気軽に立ち寄れる楽しみな施設です。

厨房・カウンタースペースから見たショップイメージ
ショップイメージ。
全面窓に向かってカウンター席が並ぶカフェ店内イメージ
カフェイメージ。
〈KIKUSUI蔵GARDEN〉内のラボイメージ
ラボイメージ。
柳沼陽介さん、南波麻美子さん、中村孝則さんのトークセッションの様子

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雪深い土地の保存食品と発酵食品


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