ダイナミックなアートが展開する
メイン会場「万代島多目的広場」
水の恵みとともにある新潟市の暮らし。信濃川と阿賀野川の大河が大量の水と土砂を運び、沿岸では延長70キロメートルにも及ぶ日本最大級の砂丘列により数多くの潟湖が形成されました。
ときに「水」と「土」は脅威にもなり、水がたまりやすい低湿地では分水路や大規模排水機構をつくって美田に変えたり、まちでは堀を巡らせたりと、先人たちの苦労と創意工夫の歴史があります。
江戸時代には、新潟は北前船の寄港地として人・もの・文化が交わり、日本海側最大の港町として発展しました。2019年1月1日に新潟開港150周年を迎えるにあたり、さまざまな記念事業が開催されます。そのひとつとして〈水と土の芸術祭2018〉が、7月14日に晴れやかに開幕しました。
〈水と土の芸術祭〉は、2009年から3年に1回開かれ、今年で4回目となるアートの祭典。
「私たちはどこから来て、どこへ行くのか 新潟の水と土から、過去と現在(いま)を見つめ、未来を考える」という基本理念のもと、今年は「メガブリッジ つなぐ新潟、日本に世界に」をコンセプトに。総合ディレクターは、2017年まで宇都宮美術館の館長を務めた美術評論家の谷新さん。
国内外のアーティストによる「アートプロジェクト」、市民自ら企画・運営を行う、市民と地域が主役の「市民プロジェクト」、創造の喜びや驚きを体験することができる「こどもプロジェクト」などが、市内各地で繰り広げられています。
アートプロジェクトの柱は大きくふたつ。ひとつは、古来、世界を構成する四元素と考えられてきた地(土)・水・火・風(大気)を素材やテーマとしたもの。もうひとつは、日本海に面した新潟の過去と未来に関わるもの。今回はこのアートプロジェクトを中心にご紹介していきます。
まず、メイン会場である「万代島多目的広場」では、このふたつを柱とする8作家による大規模な作品が展開されています。ここはかつて「新潟市水産物卸売市場」で、かまぼこ型の屋根から「大かま」と呼ばれていました。
最初に、熱で収縮させた薄いシートを天井から吊るした大西康明さんの作品《untitled》の中をくぐり抜けます。新潟の風と空を思わせる爽やかな体験。
続いて、この大空間を縦横無尽につなぐ松井紫朗さんの巨大な青いチューブ状の回路《Soft Circuit / Fish Loop》の中を歩きます。チューブが息をしているように揺れ、SF映画の宇宙船内、あるいは謎の海洋生物の体内のよう。
また、床から天井へと緩やかに昇天する100艘の船のインスタレーションは、塩田千春さんの《どこへ向かって》。純白の糸が重なりあい、幻想的に見えます。
反対側の通路へと回り込むと、岩崎貴宏さんの作品《untitled》が。海産物を入れる「トロ箱」を解体した木材で、木造橋だった初代萬代橋をスケールダウンして再現した作品。タワーは、トロ箱の中にあった、なんとエビのヒゲでできています。
床に水を流して川面に見立て、水面に橋が映り込む、日に照らされるとなお美しいインスタレーション。よく見ると災害の記憶も織り込まれているのがわかります。少し奥まった場所にあるので、お見逃しなく。
また、タイの作家、ナウィン・ラワンチャイクンは《四季の便り》と題した映像作品と絵画を発表しています。作家自ら新潟の四季を経験しながら、漁師や魚屋、まちの人々に新潟の歴史や地理、文化についてインタビューしてまとめたもの。とくに絵画に描きこまれたひとりひとりの表情が味わい深いです。
会場の外には、バスを再利用したミュージアムショップも。オリジナルデザインのTシャツ、カラフルなお菓子など、パッケージも中身もクオリティの高いグッズばかり。新潟市美術館のミュージアムショップも手がけている地元のクリエイター集団〈hickory03travelers〉がつくりあげました。
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