建物とアート散歩が楽しい「砂丘エリア」
メイン会場から少し離れた「砂丘エリア」は、まち歩きしながら楽しめるエリア。
日和山、物見山など、「山」がつく地名が多い新潟市。実は砂丘で、人々は少しでも高いところに住み、「山」と呼んだそうです。そもそも砂丘とは、川によって内陸から運ばれてきた砂が海に流され、波で海岸線に押し戻され、風で巻き上げられてできた地形のこと。この砂丘エリアにあるサテライト会場が、市民の文化交流施設〈ゆいぽーと〉です。
日本人のルーツを探求した民俗学者・柳田國男著『海上の道』などに影響を受け、人やものの「海の旅」を作品化してきた占部史人さん。新潟に滞在しながら海岸で拾い集めた流木や石などを使った小舟などの造形と、古本の紙に描いたドローイング、新潟で焼いた土器などをインスタレーションした《浮き寝の旅 Drifting Through》を発表しています。
〈NSG美術館〉には、ロシア出身でサハリン在住作家、セルゲイ・ヴァセンキン、佐渡に住む僧侶でもある梶井照陰らによる、海をモチーフにした作品が並んでいます。
旧日本銀行新潟支店長役宅を舞台に音楽・舞踏・芸能など自主企画事業を行っている〈砂丘館〉では、生け花作家・古川知泉が無数の白い糸を木の枝から等間隔に吊り下げたり、池内晶子さんが、新潟の絹糸を結びあわせて中空に吊るしたり、と繊細な作品が続きます。
山本糾さんが、大河津分水など信濃川の水路・水門を大判カメラなどで撮影した写真が展示された蔵空間では、しばしタイムスリップ。山本さんと池内さんのコラボレーション空間も見事です。
青木野枝さんの水盤を並べた作品《立山-2018/砂丘館》が映し出す周囲の景色は、見る角度や時間によって表情を変えます。
また、明治から昭和初期にかけて新潟三大財閥のひとつであった豪商・齋藤家。旧齋藤家別邸の蔵には、青木千絵さんの乾漆技法による、ひとがた彫刻が。魂が自然界へと昇華し、宇宙へつながっていくような不思議なフォルムをしています。
新潟県見附市出身で滋賀県在住の星野曉さんによる指跡も残る黒陶の彫刻は、旧斎藤家のほか、新潟市美術館などにも設置されています。
また新潟市美術館や、文豪・坂口安吾の生家跡地近くの旧市長公舎を利用した〈安吾 風の館〉にも作品が。新潟市美術館の建築は、新潟出身でル・コルビュジエにも師事した前川國男が手がけ、建物探訪も楽しめます。
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