佐渡島をめぐる芸術祭、まずは両津港周辺からスタート
越後妻有地域の〈大地の芸術祭〉、新潟市の〈水と土の芸術祭〉と、芸術祭のメッカになりつつある新潟県に、もうひとつの芸術祭があるのをご存知ですか?
舞台は佐渡島。ときに島であることを忘れてしまうような中心市街地と、そこから車を1時間も走らせれば、どこか懐かしいような、日本の原風景ともいえるような景色に出会える島です。
2016年、佐渡の有志たちによって実験的にスタートした〈さどの島銀河芸術祭〉。今年で2回目の開催となり、後期の会期が9月28日からスタートします!
この芸術祭がユニークなのは、著名な作家ばかりではなく、佐渡出身や在住のアーティストの作品が約半数を占めていること。彼らを媒介として、佐渡の魅力を再発見していくという試みがとられています。
佐渡とひと口に言っても広い! 作品を見てまわるには、やはり車が便利。路線バスやタクシーもありますが、レンタカーでドライブを楽しみながらまわるのがおすすめです。まずは、両津港すぐそばにある〈あいぽーと佐渡〉にて、スタンプラリーつきパスポートをゲット。さっそくアートめぐりの旅へ!
楳図かずおファンにとっては涙もの?
『わたしは真悟』展
SFや恐怖漫画の代表格、楳図かずお。2018年、“漫画におけるカンヌ”ともいわれる〈アングレーム国際漫画祭〉で、永久に遺すべき作品として『わたしは真悟』が選出されました。
実は同書のクライマックスシーンの舞台は佐渡。ラストシーンを3次元に昇華させたこの作品は、ストーリーを知る人には驚きと感動をもたらすはず。できれば佐渡を訪れる前に『わたしは真悟』を読破して、作品を体感してほしい!
ディレクター自らの作品に込められた思い
あいぽーとのすぐ近くにある、かつての漁業市場の事務所も会場になっています。この銀河芸術祭の発起人であり、佐渡在住のアーティスト、吉田モリトさんのインスタレーションは、胸がざわつくような不穏な雰囲気を醸し出しています。
廃墟的空間にこだまするのは、電波にのって佐渡に届く、朝鮮半島やロシア、中国のラジオ放送。荒いノイズのほか、時間によって異国の言葉が流れ出します。
さらに、白熱球の点滅とともに流れるモールス信号。双眼鏡をのぞくと見える船上の旗。それらが示すメッセージや意味とは?
5年前に佐渡にUターンした吉田さん。帰省のたびに衰退していく島を目の当たりにしながら、同時に佐渡こそ芸術祭に向いた場所はないと思っていたそう。
「誰かがやるだろうと思っていたんですけど、いっこうに始まらないから、自分でやるしかないと思って。初年度はともかく“実験”でした。各地で増えていく行政主導の芸術祭に対して『本当にそれでいいのか?』という異を唱えるような芸術祭にしたかったんです」
昨年は、各芸術祭のディレクターを呼んでのシンポジウムを開催。佐渡の魅力に触れ、この島に注目してくれる美術関係者も増えてきたといいます。
「地域を盛り上げるためのアートではなく、あくまでアート作品に触れてもらい、そこから地域振興につながればいいと思っています」
湖畔に佇む舟小屋が会場に
両津港のすぐそばにある湖「加茂湖」。牡蠣の養殖が盛んで、湖の回りの家々には「舟小屋」と呼ばれる船収納庫が。その舟小屋が作品の展示スペースになっています。
佐渡名物「たらい舟」を作品の支持体にした、できやよいのインスタレーション。虹色をした緻密な模様の舟、寄せる水音、天井の竹風鈴、ほんのり潮の香りのする風が五感をくすぐります。
また同じ舟小屋に、漁に用いる網、プラスチックの破片、海藻、稲刈りに使うカマなどを魚拓のように写したイーサン・エステスによる作品も。美しさの中に、海や海洋生物への危機感をにじませています。
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