感動必至の風景も見どころ! 北部アートめぐり
これぞ佐渡の原風景! ダイナミックなノースエリア
次は、島の北部へと向かいます。潮風を受けた灰色の木造家屋と、静かな漁村。切り立った山々と、亀を彷彿させる景勝。深い藍と鮮やかな緑青を混ぜたような、透き通る海―― こんな風景がまだ日本にも……! と思わず感動してしまう北部エリアには、2か所で作品が展示されています。両津港から少し時間はかかりますが、風景も作品もおすすめです。
佐渡の海の刹那を切り取る写真
島の最北部、鷲崎という集落にある漁場倉庫。ここには佐渡在住の写真家、梶井照陰さんの作品が展示されています。
時間、天気、季節などによって刻々と表情を変える海。その魅力にとりつかれ、20年にわたって佐渡の海を撮影し続けてきた梶井さん。
大荒れの日、埠頭で巨大な水しぶきを被りながら。または沖合に漕ぎ出して。波を目線の高さでとらえると、こんなにも違う海の一面が見えてくる、そんな千差万別の波が展示されています。
後期には『HARBIN』の展示もスタート。時代にのみ込まれてゆく中国・ハルビンの下町と新しく生まれ変わろうとするまち並み。二度と蘇ることのない、いましか見られない光景は、『NAMI』にも通じるものがあるはずです。
実は僧侶という顔も持つ梶井さんは、銀河芸術祭の実行委員長でもあります。吉田さんの情熱に押され、初年度から実行委員長に。実験的に始めた芸術祭でしたが、実際にスタートさせてみると、地元の方の積極的な手助けに支えられてきたといいます。
「地元の大工さんが全作品の展示の設営に関わってくれているんです。僕の展示も、集落の電気屋さんや大工さんが手伝ってくださって」
とにかく地元の協力あってこその芸術祭だという梶井さん。参加アーティストもしばらく佐渡に滞在しながら作品を制作し、その間に佐渡の風土や人に魅せられ、移住を決断する人もいるのだとか。
「だんだん集落が消滅していっているのが現状ですが、作品の設営を手伝ってくれた大工さんが指揮をとった、“虫崎100人盆踊り”という新たな祭りもスタートしたりして。虫崎は17人の限界集落ですが、2年目の今年は参加者が150人以上も集まる祭りになりました。芸術祭も、佐渡内外の人たちが知恵を出し合い、未来につながるものにしていけたらと思いますね」
佐渡の秘境ともいうべきダイナミックな「外海府」
『NAMI』の展示のある鷲崎漁港からそのまま反時計回りに海沿いをドライブ。佐渡北部の西側の沿岸は「外海府(そとかいふ)」と呼ばれています。
佐渡の中でも群を抜く透明度の海と、奇岩や絶壁の数々。ときどき現れるトンネルも、岩を荒く削ったような武骨さで、外海府の風景にピタリとはまっています。その道すがら、佐渡の中でも圧巻ともいうべき絶景が!
亀が寄り添ったような「二ツ亀」。海水の透明度は佐渡の中でもトップクラス。島へは浅瀬でつながっており、潮が引いているときには濡れずに対岸へ渡ることができます。
それにしても、南国リゾートの海の色とは違う、なんとも美しい青! 天気のいい日に訪れたなら感動ひとしおです。ぜひ車を降りて、海岸近くまで行ってみて!
また、佐渡で最も有名な景勝地「大野亀」。こちらも巨大な一枚岩からなっており、日本最大のトビシマカンゾウの群生地としても有名です。6月には山吹色のカンゾウの花で埋め尽くされます。
遊歩道をたどれば、日本海を一望できる大野亀の頂上へ。片道30分程のハイキング、時間があれば出かけてみては?
大野亀はこちらでも紹介しています。→「360度フォトジェニック! 佐渡をかわいく切り取ろう」
収集せずにはいられない衝動『ブイアート』
地理的な理由からも、近隣諸国からさまざまなモノが流れ着く佐渡。岩谷口という集落で1960年代から主にブイや漂着物を集め、自宅周辺を装飾してきた奥野栄次郎さんの『ブイアート』は圧巻です。
展示エリアに足を踏み入れれば、形も大きさもさまざまなブイが、まるで祭りの提灯のように出迎えてくれます。よく見ればハングル、中国語、ロシア語といった文字が。展示されているのはブイだけではなく、昨年ニュースを騒がせた、北朝鮮の木造船プロペラなども含まれています。
本業は大工という奥野さん。前述のとおり、銀河芸術祭のために制作したものではなく、長年の集積がアート作品と化したもの。芸術祭を開催するにあたり、アドバイザーが島を視察していたところ、偶然見つけたというのもおもしろいエピソード。
御年80歳を超えたいまでも、本業を続けながら漂着物を収集し、制作を続けているという奥野さん。まだまだ進化するアートとして、注目を集めています。
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