トキにも出会えるかも!? 絶景棚田の作品&イベントも
神聖で不思議な空間で瞑想に耽る?
ふたたび両津港の近くに戻ってきました。加茂湖を挟んで、先ほどの舟小屋と反対側に位置する秋津熱田神社には、作家・村上春樹が好きというフランス人アーティスト、シャルル・ムンカの作品が。『ねじまき鳥クロニクル』に着想を得てつくられた作品です。
「どこからも誰からも遠い場所で、僕は静かに束の間の眠りに落ちた」
(村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』より)
この引用で思いついた場所があるなら、ご名答かもしれません。神聖かつ不思議な空間で、しばし瞑想に耽ってみては?
また、伝説的バンド〈ボアダムス〉などで知られる∈Y∋が手がけた最新作品が、銀河芸術祭に上陸。加茂湖の南に位置する、かつて佐渡の道の駅にあった能舞台が、彼の手によって新たな精神の世界へ。
暗闇の中の作品のため、能舞台に入る前に約10分間の目慣らしタイムが。ガイドについて進めば、無数の光のドットが浮かび上がり、まるで銀河や異次元をさまよっているかのよう。舞台に置かれた水槽、静寂の中に響くボンベの水音。想像力がかき立てられるような空間です。
トキにも出会えるかも!? 旅荘・国見荘
加茂湖から少し南下した新穂というエリアに、かつて佐渡の伝統芸能を披露する旅荘であった〈国見荘〉があります。なんと放浪の画家・山下清の母の生家でもあるのだとか。
こちらの会場には、京都生まれ、佐渡在住のjujiが手がけた木版画、ガラス作家、戸田かおりのオブジェや器、自然界のあらゆるモチーフを竹細工に落としこむ本間秀昭の、3人の作品が展示されています。
さらに国見荘では「トキ」の観察ができるチャンスが。「朱鷺色」と呼ばれる薄紅色の羽を広げて飛ぶ様子や、眼下の田んぼで水浴びする姿、ねぐらも見られるかも。自然の中で生きるトキが見れるのは佐渡だけ。お見逃しなく!
また国見荘では、地元の高校生が考案した「おにぎりランチ」が味わえる食プロジェクト『島カフェ~musubi~』も。作品めぐりの合間に、佐渡産米100%のおにぎりをどうぞ。
島の人にも知られていない美しい棚田へ。その絶景でイベントも!
もうひとつ、佐渡ならではの風景に溶け込んだ作品をご紹介。国見荘よりさらに南へ下った「岩首昇竜棚田」に、その作品はあります。
佐渡へ流刑となった世阿弥をモチーフにした、初年度から継続展示されている寺田佳央の作品。木舟が逆さになったような書斎は真東を向き、春と秋の彼岸の日には、窓から望む水平線から太陽が真っ直ぐ昇ります。
言葉にならないほど美しい岩首昇竜棚田。実は江戸時代の年貢逃れの隠し田だったという逸話も。島民ですら近年まで棚田の存在を知らない人が多かったようですが、初年度の芸術祭をきっかけにじわじわと注目が集まっています。
この岩首昇竜棚田で、10月8日にアウトドアブランド〈スノーピーク〉と「田んぼキャンプ」を共催。収穫されたばかりのお米を炊きだして、みんなでいただくという贅沢なひとときが過ごせます。
また同日には、稲刈り後の棚田で『SADO INFINITY 88 Cymbal』を開催。島民44名、島外の44名、計88名のシンバル部隊が8の字に編成され、∈Y∋の指揮で奏でるという奇想天外のライブイベントです。現在、シンバラーを募集中! 詳しくはこちら。
さらに、宇川直宏主宰のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル『DOMMUNE』が銀河芸術祭に出現! 『SADOMMUNE(サドミューン)』として、10月6日、7日には両津のスナック〈瀬里奈〉から、そして8日には岩首昇竜棚田から『SADO INFINITY 88 Cymbal』の模様を配信します。
ところで、なぜ“銀河”芸術祭なのか? 吉田さんに尋ねてみると、こんな答えが。
「『荒海や佐渡に横たう天の川』という、佐渡に島流しされた民を思って読んだ松尾芭蕉の句があって。佐渡には商業施設などはあまりないけれど、だからこそ夜になると星空が本当にきれいに見えるんです。だから、物質的なモノはなくても、実はめちゃくちゃ豊かなものがある。そういう意味が込められています」
各作品をよく見てみると、そこかしこに共通するテーマや言葉が見えてくるかもしれません。点と点がつながって、「あっ!」という驚きに変わったとき、銀河芸術祭のさらなるおもしろさやテーマに遭遇するかも?
作品だけでなく、佐渡という島の風景、風土、人の温かさにも触れられるはず。そんなアートな旅へ、この秋出かけてみてはいかがでしょうか?
Information
【さどの島銀河芸術祭2018】
会期:前期 2018年8月10日(金)~8月26日(日)/後期 9月28日(金)~10月14日(日)
会場:佐渡島内複数個所(両津地区、新穂地区、鷲崎地区、岩谷口地区、虫崎地区、岩首地区ほか)
料金:パスポート 大人2000円、小・中学生500円(会場ごとの個別鑑賞チケットあり。各会場受付にて販売)
web:さどの島銀河芸術祭プロジェクト
credit text:林貴代子 photo:ただ(ゆかい)