新潟のつかいかた

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老舗メーカーと〈中川政七商店〉
が手を組み生まれた、
既成概念を打ち破る
ユニークなニットブランド〈kuru〉 Posted | 2018/11/28

丸正ニットファクトリーと中川政七商店が組んで生まれた〈kuru〉のニット

〈見附ニットまつり〉も行われるほどニット熱の高い見附市

セーターやカーディガンにはじまり、マフラーや手袋など、誰もがひとつは持っているニット製品。もし、その衣類ラベルや品質表示タグに「MADE IN JAPAN」と書かれていたら、新潟県でつくられたものかもしれません。

あまり知られていませんが、実は国内有数のニット産地である新潟県。その中でも五泉市、見附市、長岡市(旧栃尾市)が代表的な産地で、それぞれに特徴のあるものづくりが行われています。

五泉市がレディース向け製品を中心に日本一の生産高を誇り、長岡市(旧栃尾市)がスポーツウェアや高級車向けスピーカーネットなど多様なニット製品も生産するなか、新潟県の中央に位置する見附市はメンズ向け製品の生産量が多いのが特徴。また春と秋の年2回、市内のニットメーカーを会場に開催される〈見附ニットまつり〉は、市内外から多くの人が訪れる見附市の一大イベントとなっていて、名実ともにニット製品がまちの“顔”となっています。

丸正ニットファクトリーの春夏商品のサンプル
ずらりと並んだ、春夏商品のサンプル。ひとくちに“ニット”といっても、幅広いスタイルがあることを実感させられる。

そんな見附市のニットメーカーの中で最も古い歴史を誇るのが、天保3年(1832年)創業の〈丸正ニットファクトリー〉。アパレルメーカーや百貨店のOEM(他社ブランド製品の製造)のみならず、デザインや物流全般、さらには海外の原料メーカーや紡績メーカーと提携して、ほかにはない高品質な素材の開発までも行っている、市内最大級規模のニットメーカーです。

〈kuru〉のニット商品たち

〈中川政七商店〉とのパートナーシップにより
誕生したニットブランド

長い歴史のなかでニット職人たちが培ってきた技術を守りつつ、ニットを1着丸ごと立体的に編むホールガーメントと呼ばれる製造技術をいち早く導入するなど、新しい素材やテクノロジーを積極的に取り入れている〈丸正ニットファクトリー〉。

現在ではファクトリーブランドも展開していますが、そのなかには販売店と協力しながらも、一般的なOEMとは違った新しいかたちで展開しているブランドも。それが〈中川政七商店〉とパートナーを組み、2016年にスタートした〈kuru(クル)〉。

オリジナルのボックスに入った〈kuru〉のカーディガン
メリノウールとシルクを撚りあわせた糸で編み立てたカーディガン。袖口には、牧場などで動物の個体を識別するイヤータグ(耳標)をモチーフにデザインされたブランドプレートが。

オリジナルのボックスに入った〈kuru〉のニットを手にして、まず驚かされるのが肌ざわり。生地が手の上で溶けているのではないかと錯覚してしまうほど、なんとも柔らかく軽いのです。またホールガーメントの技術でつくられているため、一般的なニット製品と違って継ぎ目がないのも〈kuru〉のニットの特徴のひとつ。その着心地は、もはや“着る”というよりも、あたたかな空気の層を“まとう”ような感覚に近いかもしれません。

通常のOEM製品の場合、販売をするブランドやアパレルメーカーは生産背景を隠したがるもの。しかし〈kuru〉に込められた〈中川政七商店〉の思いは、そうではありませんでした。丸正ニットファクトリー7代目の佐野統康(もとやす)さんは驚いたようです。

「〈kuru〉の場合は真逆で、当社のコンセプトや歴史が、製品の持つストーリーとして全面に出ているんです。ブランドがスタートした当初は、うちの純粋なファクトリーブランドだと思われた人が多かったですね」

オリジナルのボックスに入った〈kuru〉のカーディガン

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