お客さんだけでなく、ショップにも喜んでもらえることを目指して
東京で行われた展示会に出展したのをきっかけに、県外のショップでの受注会〈ORDER BORDER TOUR〉や各所とのコラボが始まり、約7年前にオンラインでの受注システムも完成した〈G.F.G.S.〉。立ち上げ当初は小栁夫妻だけだったスタッフも数が増え、現在では生地の編み立ても自社で行うようになりました。
海外で大量生産される製品におされ、国内の繊維メーカーが苦戦するなか、ファクトリーブランドとして着実に成長し続けている〈G.F.G.S.〉。でも「運が良かっただけです」と、小栁さん。
「受注会にしても、ショップのほうから声をかけてくれたからこそ、始められたんです。だからネット通販が主流となって小売店が弱くなっている今、お客さんだけでなく、お店にも喜んでもらえるにはどうしたらいいかと、とにかく考えています。『チャンスは準備している人にしかこない』という誰かの言葉を信じて、スタッフみんなでがんばって準備をしている感じですね」
そんな〈G.F.G.S.〉として行っている“準備”のひとつが、ボーダーの種類を増やすこと。これまでは総ボーダーのみの展開でしたが、ボディの上下に無地の部分があるナバルボーダーや、異なるボーダー幅を組みわせたクレイジーボーダーのシャツも2019年2月以降からオーダーできるように準備を進めています。
この新たな展開により今後さらにオーダー数が増え、現在のシステムを維持できなくなってしまうのでは……と一瞬、不安になりましたが「この業界にいると、売れなくなった製品が廃棄処分されているのがよくわかるんですよ。職人ですら『こんなにたくさんつくる必要あるのかな?』と思うことがありますから」という言葉に、どんなにブランドの人気が高まろうとも、完全受注生産という初志を貫徹する意志が感じられました。
また、現在デザインラボを構える商店街に、ボーダーシャツが生産される様子を見ることができる店舗をオープンさせる計画も進行中。実際に製品や生地サンプルを手に取りながら、自分だけの一着をオーダーできる場ができれば、加茂市を訪れる楽しみが、またひとつ増えそうです。
地域の工場と協業してつくるボーダーシャツを通して、つくり手と買う人を直接つなげる“ボーダーレス”なものづくりを実現した〈G.F.G.S.〉。ブランド名の由来でもある「Good Feel, Good Style.(心が動くことを、私たちらしいやり方で。)」をモットーとする小栁さんたちが、今後どんなボーダーを越えていくのかも注目です。
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credit text:林みき photo:斎藤隆悟