新潟のつかいかた

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〈Restaurant UOZEN〉
井上和洋シェフ
土地の恵みに寄り添いながら、
野生のひと皿を極める | Page 2 Posted | 2019/01/18

パーマカルチャーを実践している自家菜園

できることはすべて自分の手でやる。今の時期はちょうど狩猟シーズン真っ只中ということもあって、「雪が降ると狩猟へと心弾む」と井上さんは言います。

「雪によって猪や鹿の足跡が追いやすくなるんです。雪は自分の足音も吸収してくれますし、だから雪が降るとうれしくて。三条の大崎山もよく行きますが、ここではヤマドリ、タシギ、カモなどの鳥を狩猟します。あまり知られていませんが、大崎山と言えばポルチーニも採れるんですよ。ヤマドリタケに分類されるポルチーニは、ヨーロッパではどの国でも食用として好まれるきのこです」

愛犬のハツ
狩猟の相棒は愛犬ハツ(雌)。非常に貴重な犬種という、梓山犬(あずさやまいぬ)の血統を受け継いでいます。

狩猟へ行くときの相棒は、愛犬ハツ。加えて狩猟や釣りでつながった三条の仲間とも猟場へ向かうことがあるんだとか。

「この三条で狩猟や釣りをする人はみなさんとても個性的で、日々刺激をもらっています。例えば狩猟仲間のひとりは、昨年の夏に鮎を約50匹手づかみして、お店に持ってきてくれました。それも2、3時間で約50匹です。そういうすごい人が三条にはいるんです」

自家菜園で畑仕事中
予約がない日は、井上さんはお店のスタッフとともに畑仕事に勤しんでいます。

一方で、お店の真向かいにある自家菜園の手入れも日々怠りません。それもパーマカルチャー(農業をベースとした持続可能なライフデザインの体系)の概念をもとに、枯れ葉や家庭から出た生ごみなどの有機物を、微生物や菌の力で分解発酵させてできた堆肥(コンポスト)を利用した循環型の畑づくりを井上さんは実践しています。

菜園に発生する雑草
自家菜園に発生する雑草はそのまま抜かずに刈るだけに。残した根で土を柔らかくして全体を耕していきます。

「パーマカルチャーは本を読んだりしながら独学でその概念を覚えていきました。もともと東京でお店をやっていた頃に“ロハス”という言葉が社会で使われ始めてきて、その頃から健康で持続可能な生活をするためには何が必要か、ずっと興味があったので、そのロハスの先にあるパーマカルチャーの概念は、自分のなかにすっと入ってきました。

そのうえでの自家菜園ですが、見ての通り、ぱっと見は雑草だらけで何も手入れをしていない畑だなと思われそうですが、実際よく見てみると、その雑草と共存できるくらい力強く野菜が育っているんです」

この菜園で育つのは、ニンジン、カブ、アスパラ、ナス、唐辛子、カラシナ、ケール、フェンネル、セルバチコ、ルッコラ、レッドソレル、アマランサス、バジルなど。野菜やハーブが必要なときは、この自家菜園から必要な分だけ収穫して、さっと調理してお皿に乗せます。

「今は畑も安定してきましたけれど、最初の頃は、芽は出ても実はならない状態で何をやっても育たなかったんです。その原因は何かを考えたときにおそらく土が悪いんだと思って、そこから枯れ葉や生ゴミに新潟産米ぬかを加えたコンポストをつくって畑に戻してみたところ、やっと育つようになりました」

三条市の田園風景
井上さんが狩猟した〈鹿のポワレ〉

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