日本で“初めて”づくしのクラフトビール
米どころ新潟といえば、お酒は日本酒。そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。確かに新潟県には89の日本酒蔵があり、日本一の蔵数を誇ります。また、年間の日本酒消費量も全国1位(平成28年度・総務省「家計調査」より)。日本酒好きな県なのは間違いありません。
しかし、日本酒だけではなく、クラフトビールについてもアツイ県というのをご存じでしょうか? 今回は、“新潟産”のクラフトビールの中から、“日本初”を実現した3蔵をご紹介します。
ビールの五輪で金賞を受賞した【スワンレイクビール】
ビールの五輪と言われている『ワールド・ビア・カップ』で、日本のメーカーとして初めて金賞を受賞したのが〈瓢湖(ひょうこ)屋敷の杜ブルワリー〉です。大手を含む38か国のビールメーカーが参加し、1150銘柄が出品した中で、2000年に同社の〈ポーター〉が“世界一”に輝きました。
〈瓢湖屋敷の杜ブルワリー〉は、冠婚葬祭を主な事業としている〈株式会社天朝閣〉が、海外視察の際にブルワリーで結婚式が行われているのを見て、「日本でもできるのではないか」と1997年に始めました。
ブルワリー名にある「瓢湖」とは、新潟県北東部の阿賀野市にある小さな湖。冬になると毎年5000羽以上の白鳥が遠くシベリアの大地からエサを求めてやって来て、ピーク時には湖一面が美しい白鳥で覆われます。その湖からブランド名をつけ誕生したのが〈スワンレイクビール〉です。
ブルワリーの立ち上げから携わっているのが、本田龍二さん。新潟県の専門学校でバイオテクノロジーを学び、授業の一環で日本酒づくりも行っていた本田さんは、地元企業でビール事業が始まると知り、迷わず飛び込んだのだとか。当初は、アメリカから指導にやって来たエド・トリンガリー氏の味に近づきたい一心で、必死に取り組んでいたそう。
「とにかく駆け抜けた感じ」と話す本田さんですが、そのまさに駆け抜けていた2000年、『ワールド・ビア・カップ』で、〈ポーター〉が初めて金賞を受賞します。ローストされた深いモルトのコク、心地よい炭酸、すっきりした甘みのある黒ビールの〈ポーター〉は、2006年にも再び世界一になり、〈スワンレイクビール〉は快進撃を突き進んでいくのです。
これまでに国内外におけるビアコンテストにおいて、計119個のメダルを獲得するという、輝かしい実績を残しています(2018年7月現在)。
なお、〈スワンレイクビール〉は、定番5種(ポーター、越乃米こしひかり仕込みビール、アンバースワンエール、ホワイトスワンヴァイツエン、ゴールデンエール)のほか、期間限定を2~3種つくっており、年間15種類ほどのビールを醸造しています。
新潟県産のコシヒカリを使用した〈越乃米こしひかり仕込み〉はラガー(下面発酵)スタイルで醸造されており、キレが良く、淡麗ですっきりした飲み口。美しい琥珀色の〈アンバースワンエール〉はしっかりとしたコクと苦みが特徴で、カラメルのような風味と麦の香ばしさを味わえます。
「ビールは生きもの。ちょっとしたストレスも味に影響します。とにかく常にビールに向き合ってつくっています」という本田さんの真摯な仕事が、このすばらしい味に仕上げているのでしょう。
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