日本第1号のブルワリー【エチゴビール】
日本で初めてのブルワリーを手掛けたのは、〈上原酒造(現:越後鶴亀)〉という新潟市にある老舗の酒蔵。〈越後鶴亀〉の銘柄で全国的に知名度のある蔵元が、ビール製造の規制緩和が行われた1994年に真っ先に醸造免許を取得し、地ビールづくりに着手しました。
〈上原酒造〉の5代目・上原誠一郎さんは若い頃にヨーロッパで暮らした経験があり、ドイツのバイエルン地方で地ビールと出会いました。各地で醸造所に立ち寄り、併設されたパブを見て、「日本にもこんな場所があったら」と夢見たそうです。そして、帰国後に酒蔵を継ぎ、その夢を叶えました。
上原さんは良い原材料に重点を置き、厳選した麦芽、ホップ、酵母を輸入し、〈越後鶴亀〉の仕込み水と同じ湧水を使用して地ビールを醸造。また、清酒酵母を使った吟醸ビールなど、オリジナリティあるビールも開発しました。1995年にはブルーパブ(併設の醸造所でつくられたビールを提供する店)を開店、1997年には2店舗目もオープンさせるなど、地ビール第1号のブルワリーとして事業を拡大していました。
しかし、この頃から地ビールブームが下降線をたどり、多くのブルワリーが廃業していくなか、〈上原酒造〉も例外なく経営が苦しくなってきました。そこで、同じ新潟県内の企業〈株式会社ブルボン〉の支援を受け、〈エチゴビール株式会社〉を設立。2010年には完全子会社化されました。
黄金色に輝く〈ヴァイツェン〉は、バナナのようなフルーティーな香りで華やかな印象。すっきりした甘みで苦みがほとんどないのが特徴です。〈ペールエール〉は、爽やかな香りと軽い甘み、ホップの苦みがバランスよくまとまっています。そして、きれいな泡立ちの黒ビールの〈スタウト〉は、しっかりした甘みとローストされた麦の香ばしい風味、若干の酸味がキレを良くしてくれています。
〈エチゴビール株式会社〉では、定番のろ過ビール、無ろ過ビールのほか、季節限定など常時10種類以上を醸造。創業からの醸造責任者バワ・デムヤコ氏は退社しましたが、エチゴビールの醸造方法は受け継がれています。そして、2018年4月に開催された『第7回ニューヨーク・ビア・コンペティション』で〈プレミアムレッドエール〉が金賞を受賞するなど、現在も第一線で活躍しています。
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