新潟のつかいかた

spot-utsuwa-001-ec

多彩な色使いだからこそ
どんな料理も美しく映える!
普段使いしたい〈falaj〉のうつわ Posted | 2020/07/15

鮮やかな色彩を生み出す「フュージング技法」

陶器、磁器、漆器、ガラス……ひと口に「うつわ」といっても、素材やつくり方、そしてうつわが放つ趣きやたたずまいはさまざま。今回は、クリアな見た目が夏の食卓に涼を呼ぶガラスのうつわにフォーカス。透明感のある涼やかな美しさは、暑い季節こそ使いたくなるのです。

透明感のある四方皿
ガラスのおちょこ
ゆるやかに光を映すコロンとした小皿におちょこ。どんな料理を盛り付けようか……いやアクセサリーを入れてもいいかも。

フュージング技法によって生まれるカラフルな色彩

新潟県上越市にアトリエを構えるガラス工房〈falaj〉。falaj、見慣れない言葉ですが読み方は「ファラジ」。アラビア語で「すてきなものを分かち合う」といった意味があります。工房を営むのは、丸山慎二郎さんと淳代さんのご夫婦。夫婦そろってガラス作家というのは日本ではなかなか珍しいことなのだそう。

丸山慎二郎さんと淳代さん
アトリエがあるのは上越教育大学のすぐ近く。春日山の山麓から広がる緩やかな丘陵地帯で、緑豊かな住宅街としても知られています。おふたりの背景には青々とした木々が……この豊かな自然も創作活動に欠かせない大切な要素のひとつ。

鮮やかな色の組み合わせにぽってりとしたフォルム。透明で華奢というイメージの強いガラス製品とは異なる個性的な美しさは、色とりどりの板ガラスを組み合わせてつくるフュージングといった技法によって生まれるものです。

角皿と丸皿
ガラス板の組み合わせ方によって、さまざまな模様が生まれる。右上の格子模様が〈falaj〉の作品の特徴的なパターン。

「カットした板ガラスを組み合わせて、電気炉で2回に分けて焼きます。温度が高すぎると溶けてしまい、低すぎると溶けずにガラス同士がくっつかない。気候や湿度、入れる枚数によって、温度を毎回微妙に変化させているんです」(慎二郎さん)

完成までには最短で2日ほど。作業工程が多く完成までに時間がかかるため、フュージング技法のつくり手は少ないのだそう。
さらに、フュージング専用の色板ガラスを主に製造するのは、アメリカ、メキシコ、イタリアの各国に1社ずつ、計3社しかないため仕入れもかなり困難。通常はガラスの代理店から仕入れていますが、手に入らない場合はメーカーから直輸入。「輸送費が半端ないんですよ(笑)」と、慎二郎さん。

ガラスをカット
この日は、板ガラスやカバーとなるガラスのカットは淳代さんが、板ガラスの組み合わせやデザインに関わる作業は慎二郎さんが担当。作業分担は日によって変わる。
指紋や汚れをきれいに拭き取る
カットした板ガラスは、ひとつひとつ丁寧に洗い、指紋や汚れをきれいに拭き取っていく。この作業は焼き上がるごとに繰り返す。
離型紙に板ガラスをのせる
離型紙に板ガラスをのせていく作業。色の組み合わせにルールはなく、その時々によって、頭の中で完成型を描きながら組み合わせていく。

〈falaj〉のうつわには、このほかに、和柄を施した型紙をガラスに貼りつけ、研削材を吹き付けて模様を彫っていく「サンブラスト」といった技法でつくる和柄シリーズと、粉のガラスを重ねながら花の模様をつくり出していくパウダーシリーズがある。どれも繊細でありながら、ころんと愛らしい。

和柄シリーズ
こちらが和柄シリーズ。西洋での文化が根強いガラスに、あえて和の伝統模様を組み合わせた独創的なデザイン。
パウダーシリーズ
花びらを重ねるごとに焼く・冷ますの工程を施すため、完成までに最短でも5日はかかるというパウダーシリーズ。2019年11月、若手の陶芸家と個展を開いた際に生まれた新シリーズです。
〈falaj〉の角小皿

次のページ:〈falaj〉誕生のきっかけは
地元情報誌だった


次のページへ →