新潟のつかいかた

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秋葉区の柿の木に、魚沼の火山灰……
〈青人窯〉のうつわには
自然豊かな新潟の魅力がつまっていた Posted | 2020/08/21

使いやすさを考えてつくられた驚きの軽さ!

新潟県新潟市中央区にある〈沼垂テラス商店街〉。かつて市場としてにぎわっていた長屋を改装し、今では個性豊かな雑貨屋やカフェなどが軒を連ねるオシャレな人気スポットです。その一角に〈青人窯(あおとがま)〉はあります。

青人窯の外観
レトロな長屋の雰囲気をそのまま残した〈青人窯〉。まわりには古くて新しい独特のまち並みが広がっています。

出迎えてくれたのはこのおふたり、作陶家の大山育男さんと奥様の寛子さん。

作陶家の大山育男さんと奥様の寛子さん
育男さんは新潟市出身、寛子さんは兵庫県神戸市出身。

扉を開けて中に入ると、アンティークの棚やテーブルにうつわが品よく並べられた、なんとも心地よくすてきな空間が広がります。

青人窯のショップスペース
店内には〈青人窯〉のうつわをはじめ、カトラリーなどの日用品やアクセサリーなども並びます。凹凸のある独特の風合いがうつわを映えさせる漆喰の壁は、大山さんご夫婦と、助っ人として来てくれた商店街の方々のDIYによるもの。

〈青人窯〉はショップ兼工房。そのうつわは陶土と呼ばれる粘土を主な原料としてつくる「陶器」。うつわを手に取り、まず驚いたのが軽さ。「土もの」と呼ばれる陶器は、厚手でずっしりと重いものが一般的ですが、〈青人窯〉のうつわはとにかく軽い。

「うつわのふちから底にかけて全体的に薄くつくっているので軽いんです。薄く仕上げるには技術が必要ですし、時間もかかります。あまり効率がよくないんですが、日常的に使うものであれば軽いほうが使いやすいじゃないですか。なので、実用強度が保てる範囲で、薄く、軽く仕上げています」(育男さん)

丸鉢
陶器ならではのマットな質感と土のぬくもりを感じるザラッとした手触り。この見た目からは想像できない軽さ。

〈青人窯〉の定番のうつわは、2種類の陶土と4種類の釉薬を主軸につくられています。陶土は、白っぽい岐阜県多治見市の土と、黒っぽい滋賀県甲賀市信楽の土を使用。

釉薬がまたおもしろく、コバルトという金属と鉄分の多い松の灰でつくる「灰るり釉」や、美濃焼きの伝統釉である「黄瀬戸」をアレンジした「白せと釉」のほか、新潟市秋葉区にある〈タカツカ農園〉でとれる柿の木を薪ストーブで燃やしてつくった「柿灰釉」、南魚沼市の火山灰を用いた若草色の釉薬「魚沼緑灰釉」など、育男さんが手づくりしています。

ほかにもル・レクチエから釉薬をつくってみたりと、新潟の自然を生かした釉薬づくりを行っています。

3種類の丸皿
「灰るり釉」(奥)、「白せと釉」(中央)、「柿灰釉」(手前)。
魚沼緑灰釉を使った器
若草色の釉薬「魚沼緑灰釉」。

これら4種の釉薬が生み出す質感に合う形状を目指した結果、リムプレートや浅鉢など、シンプルで硬質なデザインに辿りついたという育男さん。「あまり突飛な形にはせず、料理が映えるうつわであることも大切にしています」(育男さん)

木瓜皿や花器

花器や酒器、カップ、茶碗、豆皿など、種類はさまざま。同じデザインでも、ふちの高さや釉薬のかかり方が微妙に異なり、違った風合いを楽しませてくれます。

青人窯の丸皿

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とあるグルメ漫画だった


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