色があるからこそ、どんな料理も美しく映える
〈falaj〉のうつわには、すっきりとシンプルな四角形のものが多い。その背景には、「なるべく多くの人に、日常的に使ってほしい」といった思いが込められています。
「僕たちがガラスを始めた頃のガラス製品というと、装飾品のような高価なものか工場で大量生産されたものか、の両極端しかなかったんですよ。それを変えたかったんです。作家がひとつひとつ丁寧に手づくりした作品を、なるべく多くの人に気軽に使ってほしい。そのためには、手に取りやすい価格に設定しなければと思って」(慎二郎さん)
板ガラスは丸くカットすると、ロスが出てしまうため、価格設定を高価にしなければならない。それを防ぐため、〈falaj〉のうつわは四角く切り出した板ガラスを使うようになりました。それによって生まれたのが〈falaj〉を象徴する格子模様です。カラフルな色の組み合わせがパッと目を引くデザインには「価値観や考え方の違いが共存してもいい」という思いも込められています。
「多色使いのうつわは料理を盛るには使いにくいと思われがちですが、実際はその逆で。色がある分、どんな料理でも映えるんですよ。私たちもよく使いますが、唐揚げとか色味の少ないおかずをバサッと盛りつけるだけでもサマになるんです(笑)」と言って淳代さんが用意してくれたのが、こちら。
お酒好きというふたり。ゆで野菜やお漬物といったちょっとした前菜も、色よく鮮やかに仕上げてくれる〈falaj〉のうつわは、日々の晩酌に欠かせないそう。「難しいことは考えずに、ほんとにさっと盛るだけ。うつわがおいしそうに仕上げてくれますから(笑)」と、淳代さん。
うつわを購入していった人のなかには、食後の薬をのせ、飲み忘れないよう食事と一緒にテーブルに置いて使っている人もいるそうです。もちろん食卓だけでなく、アクセサリーやはんこ入れにしたり、石けんを置いたり、と使い方はさまざま。リビングや洗面所にあっても自然と空間になじむのは、この色合いとフォルム、そしてガラス特有の繊細さならではかもしれません。
ガラスとじっくり向き合いたいというふたりは、現在の規模を拡大することなく、このサイクルとバランスを保ちながら制作活動に臨みたいと言います。
「いつか、すごい山奥に住むおばあちゃんのもとを訪れたら、何気なく出してくれたお茶請けが〈falaj〉のうつわにのっていたなんてことがあったらうれしい。そのくらい、幅広い人が日常使いできる作品をつくり続けていきたいです」
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credit text:新潟Komachi 河野文香 photo:中田洋介