訪日客が“秋”に急増!
新しいインバウンドの動き
なにかのきっかけで日本に関心を持ち、来日し、歴史・伝統・自然・人・食・カルチャーに触れるなかで、すっかり日本に魅了される外国人はあとを絶ちません。コロナ禍以降の海外からの熱視線はますます強まるばかり。それは2025年10月の訪日外客数が前年に比べ17.6パーセント(注)も増加したデータを見ても明らかです。
新潟県にも、上質なパウダースノーを求めて訪れる外国人をはじめ、豊かな自然のなかでアウトドアに興じたり、地域の食文化や日本酒を堪能したり、なかには飼育を委託している錦鯉に会いに来たりと、年間を通して多くの外国人が訪れます。
そして近年、新しいインバウンドの動きが。金属加工のまちとして知られる新潟県燕三条エリアで、毎秋に開催される〈燕三条 工場の祭典〉。このオープンファクトリー・イベントを目指して訪日する外国人も急増しています。

普段は関係者しか入れない工場(こうば)がひらかれ、職人と交流し、ものづくりのプロセスが見学できるオープンファクトリーは、ここ10年程の間、日本のさまざまな地域で開催されるようになりました。
その“先駆け”として知られるのが、三条市と燕市および周辺地域を舞台に行われる〈燕三条 工場の祭典〉。世界に誇る金属加工製品の数々を生み出してきたふたつの市が手を取り、2013年にスタート。13回目を迎えた2025年は、過去最多となる133の工場が参加し、4日間で6万2000人もの来場者を記録しました。
この祭典を訪れる外国人は、ダイナミックなものづくりの現場を目の当たりにし、クラフトマンシップに触れ、その技と精神、製品のクオリティに惚れ込み、気に入った品々を手に満足気に帰国する人がほとんど。インバウンド客にとっても魅力的な祭典へと成長しています。

国境を超え、評価される、
燕三条のクラフトマンシップ
600年にもわたる“ものづくりの歴史”が息づくまち、新潟県燕三条。代々続く家族経営の工場や、中小規模の企業が点在し、包丁、カトラリー、食器、工具、アウトドア用品など、多種多様な金属加工製品が製造されています。
有名ブランドの製品や、パーツの製造拠点としても機能しており、その技術の高さに「燕三条でつくれない金属加工品はない」といわれるほど。
長い歴史のなかで培われた技術、そこから生まれる高品質なプロダクト、さらに、情熱、誇り、探求心を失わず、常に高みを目指す職人たちのものづくりの精神。燕三条はそうした“技”と“心”のすべてが地域の魅力であると、〈燕三条 工場の祭典〉をはじめ、各種イベントで発信してきました。

燕三条のクラフトマンシップを世界にも示すべく、2014年にはイタリア・ミラノ、2017年には台湾・台北、2018年にはイギリス・ロンドン、2019年にはシンガポールにて、ものづくりの文化と歴史を伝える〈燕三条 工場の祭典〉展覧会を開催。
それらの活動が契機となり、2020年にはドイツのデザイン賞「GERMAN DESIGN AWARD 2020」の最高賞となるGOLDを、2022年には世界三大デザイン賞のひとつ「Red Dot Design Award 2022」にてグランプリを受賞しました。

今年3月には〈燕三条貿易振興会〉が主催し、台湾で2回目となる金属加工技術や製品を紹介する展覧会を開催。最大2時間待ちの入場制限がかけられたほか、トークイベントやワークショップも満席に。会期4日間の来場者は9000人を超え、台湾の人々の燕三条への注目度の高さがうかがえました。

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「燕三条クラフトマンシップ」
イベント 】

