2億円以上の値がついた錦鯉
2019年2月上旬、3日間にわたって開催された、第50回〈全日本総合錦鯉品評会〉。会場の東京都平和島には、今年も多くの錦鯉愛好家が集結。その半分以上は外国からの来場者で、会場はインターナショナルな雰囲気。
幼魚の部から巨鯉オスの部まで、錦鯉の審査は8部門に分けられ、それぞれに優勝、優勝次席、準優勝といった賞が用意されています。
今年の出品数は約2千匹。その中から大会総合優勝を獲得したのは、中国人オーナーが出品した「紅白」と呼ばれる錦鯉。
体長は約1メートル。鮮やかな朱と白のコントラストに、色調と柄のバランス、微かな鱗光。丸みを帯びた曲線の体躯も美しく、この錦鯉につけられた価格はなんと2億円以上! この記録はワールドレコードとなり、錦鯉ファンを湧かせました。
誉れ高き錦鯉をひと目見ようと、水槽の周りは常に人だかり。中国人オーナーも誇らしげに来場者と抱き合いながら、喜びを分かち合っている姿が印象的でした。
これらの賞の獲得を夢見る国内外の錦鯉愛好家。このイベントだけのために、来日するオーナーも数知れません。それだけ品評会にかける情熱は並々ならぬものがあり、ここで得た賞はこの上なく名誉なことなのです。
また、品評会に出品された2千匹は、エリート中のエリートともいうべき錦鯉。そんな選り抜きを一堂に見られる品評会は貴重であり、目を肥やすいい機会。錦鯉を放ったプールを熱心にのぞき込む、若き外国人オーナーもちらほら。
池がなくても大丈夫! 錦鯉の新しい楽しみ方
外国人オーナーに話しかけると「我が国では錦鯉はすごく人気だよ!」「錦鯉をもっと普及させるための取り組みを考えているんだ」と語る人も。反対に、日本では錦鯉のおもしろさや価値に目を向ける人が少なくなっているのは事実。
「錦鯉は池がないと飼えない」というイメージが先行してしまっているのが要因かもしれませんが、実は錦鯉は池がなくとも飼うことができるんです。
室内水槽で簡単に飼育ができる錦鯉。「年々大きくなってしまうのでは?」という心配は無用。不思議なことに、鯉は生きる環境に合わせて成長するので、一定サイズ以上は大きくならないのです。
アクアリウムのようにして、錦鯉の美しい模様、泳ぐ優雅さを間近で楽しむ愛好家も。意外にもワンコインから購入することができる錦鯉。馴れてくれば手から餌を食べてくれたり、人間を識別してくれたりと、深い癒しと喜びを与えてくれるペットに。
小千谷・長岡一帯で誕生し、100年足らずというわずかな時間のなかで世界中に親しまれるようになった錦鯉。これは新潟県が誇る世界的ブランドであり、新潟県のグローバリズムの要でもあるのです。
日本人である私たちも、錦鯉にもっと注目してみるべきかもしれません。そして、一度錦鯉の世界に踏み込んでしまえば、その奥の深い魅力から抜け出せなくなってしまうかも?
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credit text:林貴代子 photo:斎藤隆吾