伝統野菜の〈だるまれんこん〉
秋から冬の寒い時期に旬を迎える、れんこん。お正月のおせち料理に使われることも多いですね。れんこんは穴が空いているため、「将来の見通しがきくように」と、新しい年を迎える際に食べられるようになったとか。また、れんこんの花はたくさん種をつけることから、子孫繁栄の意味をもつといわれています。
そんな縁起物の野菜、れんこんの産地が新潟にあります。県の中央部に位置する長岡市中之島の大口地区。このエリアで90年以上にわたり育てられているれんこんは、8~10月頃まで収穫される早生種の〈エノモト〉と、10月以降に収穫される晩生種の〈だるまれんこん〉があり、どちらも〈大口れんこん〉のブランド名で出荷されています。
なお、だるまれんこんはこの地で生まれた在来種。地元で長年つくり続けられてきた伝統野菜で、〈長岡野菜〉に指定されています。まんまるとした形とシャキシャキした歯ざわりが特徴です。
生産者の想いがつまった自慢の味
かつては沼地で、ガスや温泉水が噴出していたという大口地区。栄養分が多すぎて稲作には向かない土地だったのですが、窒素分が多く豊富な地下水を含む土壌は、れんこん栽培にもってこいでした。
しかし、れんこんの収穫作業はかなりのハードワーク。水面から50センチほど下にある泥の中から、れんこんを傷つけないように掘り出すのです。しかも、だるまれんこんの収穫期は寒い冬。極寒との闘いもありながらの肉体労働は農家泣かせだといいます。
それでも「この土地に脈々と継がれてきた味をなくしたくない」と生産者は語ります。
数年前に父親の跡を継いでれんこん農家になった小坂井啓光(あきみつ)さんは、「何よりおいしいですから。一般的な早生のれんこんは台風シーズン前に収穫期を迎えるのですが、だるまれんこんは台風シーズンを越えて地下でじっくりじっくり育ちます。そのため収穫する頃には大きく肉厚になり、シャッキシャキの歯切れのよい自慢の味になります。今後は稲作用の田んぼもはす田んぼに切り替えて、この味を未来につないでいきたいと思っています」と話してくれました。
全国どこを見てもこの地でしか栽培されていない、だるまれんこん。煮ても、焼いても、揚げてもよし。万能食材のれんこんは日持ちもするので、たくさん取り寄せてさまざまな食べ方で楽しみたいですね。